第2話

「お前な、そう簡単に言ってくれるなよ。そんなことができたら、誰も苦労してないんだ。大体、国王になるって、お前、戦争でも起こして支配するか?」

「そんな物騒なことするわけないじゃん。ただ、ほかの生き物が好きな人を集めて、みんなで一斉にデモを起こすんだよ。そして、それに根負けした国王が、国王の座を譲るってわけ。」

「いやいやどういう理論だよ。」

 はたから見たら、頭のおかしい言動だろう。デフィもそう思っている。

 だが、そんな理論が通じないのが、この男、ビクトだ。

「じゃあそれを実行するには、まず、ここを出ないとね。」

「…実行するとは言ってないぞ。」

「そんな冷たいこと言わないでよ。一緒に出よ?」

「…はいはい。」

 ガシャアン!!

 思いついてからすぐに行動するタイプのビクトは、さっそく鉄格子を破壊した。

 それに続いて、デフィも渋々破壊する。

「うるっせえぞ! 黙っとけ!」

 看守は叫ぶだけで、捕まえようともしない。

 さっきも言ったように、看守というのは名目なのだ。

 それを二人ともわかっているため、無視して脱出した。


 このは、簡単に脱出できる。

 人間以下にそこまでお金をかけたくないというのが本音だろう。

 

 だが、建物を抜けても、元のところにはそうそう戻れない。


 なぜか。それは、大きな堀があり、落ちると巨大な剣山が。とてもではないが、生きて上がることはできない。

 そして、唯一建物と町がつながっている橋には、看守がいる。

 そう。名目だけではない、本物の『看守』だ。

 徹底的に体も心も鍛えられているため、そこんじょらの人間は、いや、人間以下はかなう相手ではない。もちろん、そんなこと、デフィもビクトもわかっている。

 

「いやーやっぱり青い空はいーなー!」

 そう言って、ビクトはぐぐっと伸びをした。

「じゃ、ここどうやって抜けるか、考えますかっ!」

「ますかっ! じゃねえよ…考えてなかったのかよ…」

 明るく言い放ったビクトに、デフィはため息をついた。

 …デフィはこうなることは分かってはいたが。

「…はあ…俺にいい考えがある。ついてこい。」

「えー? なになに?」

「いいから黙ってついてこい。」

 そういって、デフィはどこかへと歩き出した。


 歩いた先は、看守のいる橋の近く。

「えー? 無理くり通ってしまおう作戦? デフィにしては大胆なこと言うねー! 僕は賛成だよ!」

「…んなわけあるかよ…まあ、近いっちゃ近いのか…いいか? よく聞け。これから俺がおとりになるから、お前は真っ先に橋の方に近づけ。看守が来ても、ダッシュで逃げろ。一周回ってでもいい。必ず橋の向こうへ行け。」

「わかった! でも、デフィは大丈夫?」

「大丈夫だ。作戦は考えてある。

 じゃあ、いくぞ! 俺が何かしゃべったら、お前は橋の方まで来い。わかったな。」

「おう!」

 作戦が共有できたところで、デフィが走り出す。


「おーい! 脱走者だ! 逃げたぞー!」

 デフィはそう叫びながら、橋の看守に近づいた。

 当然、怪しまれるわけで。

 看守に簡単につかまってしまったデフィ。

「デフィー! うおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 そこに、ビクトが入っていった。

「なっ、なんだお前は!」

「隣の牢で仲良くなったら、急にあいつの檻と、俺の檻を破壊して、追いかけてきたんだ! かなりの変態なんだ…」

 そうデフィがささやくと、看守はデフィをたたきつけて、ビクトの方に向かっていった。

「えっ…ぎゃああああっ!」

 いきなり看守がターゲットをデフィからビクトに切り替えたので、慌てて建物を一周する形でにげだすビクト。その間に、デフィは橋の向こうへ行ったのだった。

「ふっ…作戦成功…」


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