第27話
僕は駅前にある喫茶店へと出向いた。学生の頃よく来た店だった。約束の1時まで15分ある。最初は落ち着いていたが、時間が詰まるにつれ、緊張してきた。そして1時丁度、篠崎が現れた。
篠崎は、白の七分袖のカットソーに、ブルーのジーンズを穿き、濃い赤色の小さな鞄を持っていた。爪にはゴテゴテとしたネイルアートがされていた。僕はゆっくりと篠崎の顔の方へと視線をあげた。高校の時と変わらない切れ長の大きな目、ほっそりとした顎、伸びた背筋。でも僕は不思議に思った。何か違う、そんな気がした。その正体は何なのだろうか。まるで篠崎そっくりの双子を見るような感覚だった。
「そんな怖い顔しないでよ」そう言って篠崎は微笑んだ。
「ごめん」僕は目を反らした。
「変わってないね」篠崎は、向かいの席に着くとそう言った。
「篠崎は・・・、変わった気がする」
「そうかもね」篠崎は目線を下に向けた。
篠崎はメニューを開き、アイスコーヒーを頼んだ。僕にも何か注文するか聞いたが、先に頼んでいたホットコーヒーが残っていたので、大丈夫と言った。
「びっくりした。まさか清水君とまたこうやって会うなんて思いもしなかった」篠崎は言った。
「そうだね」
「何か用があるんじゃないの?」
「うん。篠崎はあれから・・・、子供の事はどうなった?」
篠崎はみるみる顔を曇らせ「そんな事言いにきたんじゃないでしょ?」と怪訝な声で言った。
「ごめん、篠崎の言う通りだ。そんな事を言いにきたんじゃない」僕は一呼吸置いて「俺、高校の時、君が好きだった」と言った。鼓動が早くなる。
篠崎は視線を落とし、ストローでアイスコーヒーを掻き回した。そして「今でも私の事好きなの?」と言った。
僕は正直今でも好きなのかわからなかった。どういう結果であれば満足するのかわからなかった。それでも、うんと頷いた。
「そう・・・、店、出ようか?」篠崎は言った。
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