第25話
夏休みが終わり、篠崎は学校に来なくなった。僕の前の席はぽっかりと空き、すぐに席替えが行われた。篠崎の席は後ろの方へと追いやられた。噂は勿論あり、ある事無い事吹聴しているクラスの奴と喧嘩になった事もあった。吉井との関係もかつての親密さは無くなった。玉野は相変わらず明るく、過去に囚われそうな僕の心を何度も正しい方向へと運んでくれた。僕は玉野に負い目を感じた。何故なら僕の心はあれから、つきまとう影のように篠崎マリの事を忘れる事が出来なくなったからだ。何度も、何度も、あの時どうして篠崎を抱きしめる事ができなかったのか、繰り返し、繰り返し悩んだ。
その後、高校を卒業して僕は鉄鋼会社の経理部へと就職した。そして半年もしない内に東京の支社へ異動になった。色々と学ぶ事が多く忙しかったけれど、不思議と砂のような時間だった。掴んだ実感が無かった。
一学年下のミサは卒業後、僕のために東京の短期大学へと進んだ。彼女は卒業すると保育士となり、日々一生懸命仕事に励んでいる。
そして僕が23歳の時、尾道へと帰る事になった。
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