第15話
家に帰るとベッドに仰向けに寝転がり、スマホを取り出し、吉井に電話を掛けようかと迷い、少しの間スマホを睨み見ていると、いきなり着信音が鳴った。ビクリとし、画面を見ると吉井からだった。
「おう」と吉井は言った。
「ああ、どうした?」
「いや、別に大した用じゃないんだけど・・・」
沈黙が続いた。
吉井が言いたい事は一つしかなかったので、僕から「篠崎と付き合うんだって?」と聞いた。すると吉井はとぼけた声で「何で知ってるんだ?」と言った。
やはり酒井の言っていた事は捻じ曲げようのない事実だった。
「今日、酒井から聞いたんだ」
「そっか・・・」
「よかったじゃないか、ずっと好きだったんだろ?」
「うん、そうだな。でもお前に言われた事、実際図星だったんだよ。それで、つい反抗心と勢いでその日の夜、電話で篠崎に告白したんだ」
「結果的に良かったじゃないか。これから幸せにしてやれよ」
「そうだな。良かったんだよ。これで・・・。あと、妊娠の話だけど、あれ嘘だったよ。直接本人に聞いたから間違いないよ。多分篠崎の事を妬んでる奴のデマだったんだよ」
「それも良かったじゃないか」
「それとな。沖縄旅行の事だけどさ、お前も来てくれるよな?」
「行くよ」
「本当か?」
「ああ」
「頼むな」
「ああ」
電話を切ると、ラインメールが来ていた。見ると玉野からだった。
『先輩、相談したい事があるんですが』と来ていた。僕は『何かな』と送った。するとすぐに返信が来て『明日の放課後時間ありますか?』と来た。僕は考えて『大丈夫だよ』と送った。またすぐに『ありがとうございます。また明日ライン送ります』と返信があった。
相談の内容はおそらく水泳の事だろうと思った。
僕はスマホをポイとベッドの脇へ投げ捨て、暫く目をつぶった。
玉野の相談の件より何より、やはり今は自分の心の揺れが気になった。グラグラと心を揺らす正体に、僕は気付いていたけれど、必死で否定する事にした。今更肯定してもどうしようも無いからだ。ただ、今日はあまり眠れないだろうなと覚悟した。
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