第8話
次の日の朝、起きると身体が重く、頭もボーっとして働かない。喉の痛みや鼻水はないのだが、試しに測った体温は37度4分と出た。昨日夜風にあたったせいだろうか?
頑張れば学校へ行けなくもないが、頑張る必要がなかった。寝た所だろう母さんの枕元まで行き「熱があるから、今日は学校休むよ」と伝えた。
「・・・わかった」母さんはくぐもった寝言のような声を出した。
母さんはこういう時、ちゃんと言った事は覚えているので、僕は気にせず、学校に連絡を入れた。そして自分の部屋へと戻りベッドに横になった。暫くすると妹のドタバタと支度する音が聞こえて来て、玄関のドアを大きな音を鳴らし開けて出ていった。そうすると部屋の中は一気に静かになり、僕はその静寂の中、少し眠った。そして何かしらの夢を見た。
目を覚ますと昼の1時になっていた。ボーっとする頭の中で、見た夢を思いだそうとしたけれど、殆ど何も覚えていなかった。でも何か自由な、法則などない、空を飛んだかと思うと、次の瞬間には魚になり海を泳ぐような楽しい夢だったような気がする。小学生くらいの時には毎日がこういう感覚だったような気がする。けれど感受性がどんどんと鉛筆を削るように損なわれて、今は何かをしていても、ふとした瞬間虚しく感じる事が多くなった。
この先、就職をして、僕はちゃんとやっていけるのだろうか。まるで陸地から離れた深い、深い底の見えない大海に、頼りないイカダで漂っているかのようだ。そんな事を思っていると、また津波のような眠気がやってきて、僕は不安だらけの現実から離れ、夢の世界に入ろうと眠気に身を任せた。
次に目を覚ますと、夜の8時になっていた。流石に寝すぎで頭は甲冑でも被ったかのようにグラグラと重い。けれど体調は殆ど回復していて熱もなかった。僕はベッドから起きて、机に置いたままの適職診断の本に視線を向けた。でも読む気にはなれなかった。
台所へ行くと、妹は彼氏の所、母さんは仕事に行ったのだろう. 電気もついていなくて、冷蔵庫のモーターが悲しげに鳴っているだけだった。
冷蔵庫の中には、兄貴へプレゼントとメモ書きが張り付けてあるコンビニの袋があった。中にはゼリーとスポーツドリンクとレトルトのお粥が入っていた。僕はありがたくレンジで温めたお粥とみかんのゼリーを食べた。そして人恋しい気持ちに誘われ、スマホを見た。
吉井から『大丈夫か?』と1件ラインメールが入っていた。
僕は『もう大丈夫。治った』と返信して、明後日からのテストに向けて勉強し、1時頃にまた眠った。
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