　1879年6月8日付ヌベール紙朝刊

　天国劇場（テアトル・ド・シエル）殺人事件

　マルタン・ロンダ　舞台上で刺殺

　パリ18区に新たに完成した劇場・天国劇場（テアトル・ド・シエル）で昨日6月7日午後8時20分頃、プランセール芸術大学校教授で劇団主催者でもあるマルタン・ロンダ氏（56）が、同劇場にて上演されていた舞台『パリアンテ』の最中、殺害された。この事件で警視庁捜査一課の捜査本部は同日深夜、同舞台に出演していた俳優のエドモン・ティオゾ（20）を業務上過失致死の疑いで逮捕した。

　ティオゾ容疑者は、舞台『パリアンテ』の中で、父親殺しを行う場面で、模造剣からすり替えた短剣で、父親を演じるロンダ氏の腹部を刺して殺害した疑い。

　調べに対し、ティオゾ容疑者は「短剣でロンダ氏を刺したのは間違いないが、短剣が本物であるとは知らなかった」などと供述し、容疑を認めているものの、殺害の意図はなかったとしている。

　警視庁は今後、事件と事故の両面で捜査を進めるとしている。

　劇場の支配人であるフレデリック・ペケニュー氏は、「新しく誕生したばかりの劇場でこのような凄惨な事案が起こったことに対し遺憾に思う。今後は警視庁の捜査に協力するとともに、原因の調査を徹底し、事故などの防止に努めたい」と述べた。