第3話 立ちはだかる壁

ツーマンセルは荒んだ町を進む。バイクが激しい砂埃を上げても、二人は全く意に介さない。

しかしその一方で、目下の心配事が一つだけある。

それは食糧不足である。特にアルティスは機敏なだけにエネルギーの消費量が多く、さらにバイクの方にもエネルギーがなければ動かない。しかもバイクには重いものはそう積めない。故に道中で何度もエネルギー源を買い足さなければならないのだ。



「あちゃー、またガス欠かよ。このバイクもぼろいなぁ」


アルティスが不満を漏らす。


「ようやくガス欠ですか。お前よりコイツのほうが燃料効率いいんじゃないの?


「そういうお前のバイクもピンチなくせに」


「...面白くないな、とっととガソリン入れましょうか」


そう何気なくガソリンスタンドに立ち寄った、次の瞬間。



アルティスの目の前に、何かが迫る。



間一髪で躱したアルティス。その視界の端に、自分自身に向けられた凶刃を捉えた。



間もないうちに、二発目が飛んでくる。

アルティスは無造作に振り回されたナイフの持ち手の部分を狙って拳を一発叩き込む。

持ち手を失ったナイフは慣性に従って持ち主の元を離れてすっぽ抜け、あっけなく地面に落ちた。



なおも刺客はアルティスを狙っている。その背後に迫る影に、刺客は知る由もなかった。



アルバートが鞄を勢いよく振り上げて、刺客の頭を薙ぐ。

カーンという金属が当たったかのような音とともに、刺客は崩れ落ちた。

事実、アルバートの鞄の中には金属の携帯食料の缶が入っていた。



「油断したぜ。助かったよ、アルバート」


いまだ平静を取り戻すことができないアルバートに、アルティスは最大限のお礼を述べる。



「あ......あ.........あは.........」



アルバートは声にならない声を上げて立ち尽くしている。直立しているのも束の間、アルバートは気を失って力なく倒れた。



「失神ですね。しばらく安静にした方がいいかもしれません」



アルティスが言った後にケラケラ笑った。そしてアルティスはアルバートの鞄から財布を抜き取り、燃料の代金をひったくった。

2人のバイクは食事を済ませて満足そうだ。



アルバートが起きた後、アルティスはアルバートから逃げるようにバイクを走らせた。

事情をだいたい察したアルバートは、猛スピードでアルティスを追う。



それが原因で警察という第二の刺客に襲われる貧乏くじを引かされることになったアルバートの表情は、怒りにあふれていながらも、どこか楽しそうだった。

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