第39話 国王へのお願いと約束

 気が付けば帰りの馬車の中で、国王と2人きりだった。


「娘の事を宜しく頼むよ。それに事故により辛い思いをさせてしまって申し訳なかったね」


「えっ?俺の事知っていたんですか!」 


「やはりそうなのだね」


「あっ!・・・」


「ははは。カマを掛けさせて貰ったよ。先日大々的に兵士を連れて捜索をするも不発だったと聞いていたからおかしいと思ったのだよ。やはり君だったのだね」


「ひとつ、いや2つお願いがあります」


「うむ。私の妻を抱きたいというのでなければ大丈夫だ」


「そ、そんな事頼む訳ないじゃないですか!アモネス様からこのクズが!と罵られる未来しかないじゃないですか!」


「随分仲が良いのだね。このクズがという事はあの子の本性を知っているのだね。でも君への想いは本物だからあの子の事だけは信じてやってくれ。反対を押し切り鉱山にも僅かな手勢のみを先行部隊として引き連れる等、危険を顧みず君を探していたんだ」


「それですが、俺はまだ吹っ切れていないんです。時間を下さい」


「勿論だ。今の彼女らが重いなら、娼婦を寄越そう。後腐れのない関係なら大丈夫だろう。よし、早速今晩手配しよう。執事風の男が迎えに来る」


 晃司はこのおっさん、人の話を聞いているか?人の話を聞けー!と言えずに唖然とした。


「いや。その、俺恥ずかしながら女性経験が無くて・・・」


「うむ。それならば生娘が良いか。そうだな。勇者が性病だと洒落にならないからな。奴隷の女を抱き、経験を深め給え。で、君の要望は何だった?」


「えっと、その、私の正体についてですが、私が公言するまで黙っていてください。勇者ではなく、1人の人として信頼できる仲間を、命を預ける事の出来る者を仲間にしたいんです」


「もっともだな。それで公表していないのだな。で、もう1つは?」


「召喚事故の原因の兵士を呼び戻してください。鉱山送りになったと聞いています」


「手を回そう。理由を聞いても良いかな?」


「あっはい。死人は出ず、怪我も打ち身程度と聞いています。この事故が無ければ今の俺は無かったからです。そもそも別の人が送られたはずなんです。最初は恨みましたが、この世界の人が気に入ったし、今の出会いに感謝しているんです。だからその人を許してやって欲しいんです」


「ふっ。甘いな。だが悪くない。良かろう。但し今晩使いの者と一緒に出掛けるんだぞ!」


「あっはい」


「ところでその別の者が召喚されるはずだったという事を娘は知っているのか?」


「記憶を封じられていまして、魔導具に魔力を吸われている時にその時の記憶と俺の加護が分かりました。ですから今初めて話しているんです。因みにこの加護というのは、とある見た目だけは素晴らしい駄女神のみから与えられているんです。この世界を管理している神らしいです。本来俺のいた世界とは繋がらないそうです」


「興味深い話だね。加護は・・・知っていると思うが根掘り葉掘り聞くのは駄目だから聞かないが、誰に話して誰に話さないか興味深いな。どうすべきか腹案はあるが君の判断に口を挟まないようにしよう」


 そうしていると宿に着いたので晃司は馬車を降り、お辞儀をして別れた。


 さてどうすべきか?と唸る。

 単純なカマかけに引っ掛かり国王にバレた。

 すっかり酔も覚めた。

 食堂に行くもラミィ達はおらず取り敢えず部屋に向かう。


 部屋にはラミィとネリスが心配そうに出迎えてくれた。

 さて・・・取り敢えず国王との約束、こちらのお願いに付けられた条件に付き合わねばならないが、どうするか・・・


「ただいま」


「おかえりなさい」


 2人がハモる。


「無事に嫌疑は晴れたよ。ただ、このあともう1度呼ばれるから、先に寝ていて。多分魔導具による不具合が発生していないのかアカデミーで経過観察したいんだと思う。あれは魔導具の不具合なんだって」


 苦しい言い訳だ。

 どうしよ・・・・国王の顔を立てなければならないだろうし。

 それに口の聞き方がなっていなかったが何も言ってこなかったな。


 取り敢えずラミィとネリスの試験問題を採点して時間を潰すか?となり問題を出させた。


 後で採点するからと、回答を記載するように言ってあった。

 また、ネリスには晃司の問題を渡し、アモネス、ライラ、エリーの点数を確認してもらうようにした。

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