第33話 実技試験開始

 実技試験は1人ずつ行われる。

 練魔法場にターゲットが横並びに3つ置かれ、順次呼ばれた者がターゲットへの攻撃位置にて待機して自分の順番を待つ。


 前の人が破壊したターゲットを入れ替えている間に次の者が魔法を放つ。


 勿論攻撃魔法で挑む者はその場でターゲットに向かって発動するが、支援系や回復系は待機位置からターゲットまでの中間に行き魔法を遣う。

 1人が終わると入れ替わりの待機者が呼ばれる。

 だが、呼ばれる順番がよく分からない。

 総勢120人程おり、こうやって試験をしないと終わらないのだ。

 因みに従者の試験は練魔法場の反対側にて行われ、その相手はアカデミーから依頼された騎士が行う。

 騎士はそれなりの人数が集められており、主人の試験の半分が終わった辺りで全員終わり、待機席に戻っていた。


 待機席は観覧席で席は予め決められていた。

 試験票の番号の所に座るのだが、先程の会場には試験番号順ではなく、受験票の色分けだった。

 それもあり、隣に来たのは見知らぬイケメン貴族だった。


 晃司は中々呼ばれず、ラミィが68番目で、晃司が赤青黄色娘と呼ぶ3人は最後の10人の中にいた。


 そしてアモネスは最後から2人目、晃司はラストだった。


 ターゲットとターゲットの間は10m程離れており、基本的に隣にいる者と話ができない。


 攻撃魔法を使う者の中には珍しい雷だったりもあるが、定番のファイヤーボールやアイスボールが多かった。

 殆どの者は辛うじてターゲットを破壊したり燃やしたりしていたが、中には表面を焦がすだけの者もいた。


 アモネスは従者であるライラを引き連れており、ライラは躊躇う事もなく自らの手にナイフを突き刺した。

 するとボタボタと血が滴り落ちて地面を赤く濡らす。


 立会の講師は目を丸くしていたが、アモネスはさっとライラの手を取り、回復魔法を唱えサクッと直し、講師が手拭きでライラの手に着いた血を拭うように指示をした。

 アモネスはライラの手を水筒の水で洗い流し、手拭きで綺麗にしていく。 

 その手を講師が確認して手を触ったり、指で突いたり、グーパーをさせていた。


 周りから流石だ!とか、聖女様!等と称賛の声が聞こえる。

 試験の公平さから、水を掛けたり拭うのも試験を受ける者がする決まりだった。


 アモネスは周りにお辞儀をしてからターゲットの攻撃位置に戻り、晃司の試験を見守る。

 最後から3番目と2番目はそうやって最後の者が終わるのを待つ。


 これまでは特に問題はなかった。

 例の3人組は幼き頃より勇者様へ嫁ぐべく教育を受けていただけの事はあり、魔法も他の者達より強力で、髪の色通りの?属性魔法を放った。

 青毛のレナはアイスランスでターゲットを串刺しにし、赤毛のセリーシャはファイヤーウォールで燃やし尽くす。

 そして金髪縦ロールのエリーヌはその手に魔力で生み出した黄金色の盾を出し、その盾を持ってジャンプし、ターゲットの真上から盾で押し潰す形で破壊した。

 見た目に反してタンクだった。


 晃司は素直にこいつら見た目と実力は凄いな!

 俺に大口を叩くだけの事はあるなと感心した。


 晃司は流石に表面を焦がすだけでは駄目だよなとは思うも、やり過ぎるのはどうかとは思い、加減を思案していた。

 だがしかし、少なくともあの3人娘には勝ちたいなと、変な所で負けん気が出てしまった。


 練習の時は程々に魔力を込めてファイヤーボールを出していたが、少し多く魔力を込めて放つか!と思いそれなりの魔力を込め始めた。


 少しして隣で見守っていたアモネスは顔を青ざめ始た。

 晃司が魔力を込めると杖は鈍く光り始めたからであった。

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