第34話 事故発生?

 晃司は魔力を込め始めた時に、スキルを得る時に駄女神と邂逅した記憶と、何故か思い出せなくなっていた日本にいた時の事を思い出していた。


 オリンピック最終選考会に出場すべく長野県に向かう時に、学校で盛大に送り出された時の事だ。

 壮行会があり、何故か学校の不良共に揉みくちゃにされながら胴上げをされたりもした。

 オリンピックに行けなかったら締めるぞと冗談を言われたりした。


 また、校舎に垂れ幕が掛けられていた。

【頑張れ晃司!目指せオリンピック!】 

 皆の期待が嬉しかった。


 駅に学校の先生が送ってくれる事になっていたのだが、車に乗る前に2年生の女生徒から花束を贈呈され、頬にキスまでされた。

 本年の学際のミスコンの優勝者で、そっと耳元に囁いていた。


「先輩絶対に買ってください!私、先輩の事が好きです!その、帰ってきたら彼女にしてください!お願いします!」


 初めてされた告白だった。


 そんな事もあり、その子の事が頭から離れなかった。

 みゆきちゃんだったかな?

 あんな綺麗な子とデートが出来る?

 俄然頑張るよ!

 そうして・・・

 いけない夜を過ごして大人の階段を登ったり?する?

 やる気スイッチと運が向いてきたな!

 等々、思春期真っ只中で、俺は今青春しているぜぇ!と人生で一番?妄想の中に入れていた。


 それもあり予選を順調にクリアし、みゆきちゃんを彼女にするんだ!と最後のエアを決めていた。


「・・・これ以上は止めなさい!危険です!」


 肩を揺すられ晃司は現実に引き戻された。


「えっ!?これ何?」 


 晃司の頭上には禍々しい炎の塊があった。

 周りは騒然としていたし、杖からはバリバリバリとやばそうな音がする


「上に向けて放ちなさい!今すぐにです!」


 晃司は講師に言われるまま上空に向けて魔法を放った。


 直径2m程のファイヤーボールが晃司の頭上に有ったのだが、勢いよく空に向かっていった。すると100m程の高さで何かに当たる。


 ドッゴーーーーーーーン!


 凄まじい音と共にファイヤーボールは爆発した。


 上空の膜のようなものにヒビが入る


 それを見ていた者達は驚愕した。

 馬鹿な!

 あり得ない!

 結界が・・・

 等々だ。

 そして炎が真下に落ちてきたが同時にその膜も砕け散り、晃司が持っていた杖は砕けた。


 落ちてきた炎がターゲットに落ち、瞬時に消し炭にして行く。

 阿鼻叫喚だった。

 水魔法を使える者は水で火を消し、落ちてくる炎を人に当たらないようにしていた。

 多くの者が腰を抜かし、中には泣いている生徒や受験者もいる。


 アモネスはというと警護の女騎士達に担がれ緊急離脱させられていた。


 そして半壊した練魔法場に晃司は立ち尽くす。


 いち早く立ち直った先の講師は晃司の体をベタベタ触ったりした。


「晃司と言ったな、異常はないか?私の声が聞こえるか?」


「あっはい。大丈夫ですが、何があったんですか?」


「君が暴走?したんだよ。魔力を込め過ぎて、危険な大きさのファイヤーボールになり、我がアカデミーの誇る結界すら破壊したんだよ。まさか結界を破壊できる者がいようとはな」


「俺はとんでもない事をしでかしたんですか?」


「気にするな。試験中に魔力暴走が起こるのは数年に1度あり、毎回巻き込まれて死ぬ奴もいるんだ。それに対しての同意書に皆サインしているんだよ。それにしても君の魔力は凄まじいな。取り敢えず面倒だから今すぐ倒れて運ばれてくれ。魔力暴走という事にしないと貴様の正体がバレるぞ」


 黒いスーツ姿の20代後半の女性講師に促され、取り敢えず俺はその場に崩れ落ちというか、この講師に抱きとめられる形で倒れた。銀髪のショートカットの闊達で綺麗な女性だ。


「私はアカデミーの講師として唯一君の正体を知っている。アモネスがアカデミーにいる従姉妹の私に協力を求めてきたのだよ。少なくとも1人は正体を知っているのにも関わらず、協力してくれる関係者がいないと隠せないからとな。心配しなくても私は他の者に話さないから」


 俺は担架で治療室に運ばれて行った。

 ネリスが講師に突っかかるも、無事だし後が面倒だからと魔力暴走した事にしただけだと告げていた。

 慌てて駆け付けたネリスは半狂乱になり俺の体をベタベタ触り、異常が無いか確認した。


「晃司様!痛い所はありませんか?火傷をしていませんか?」


「有り難うネリス。心配しなくても俺は元気だよ。その、怪我人はいなかった?」


「慌てて逃げようとした者が転けて数人が怪我をしただけですわ。情けないったらありゃしない。凄かったですわ!」


 晃司は死人がいなかった事に安堵したのであった。

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