第17話 晃司の窮地とラミィの決断

 晃司は折れた剣を見て愕然となったが、次に向かってきた奴に投げつけた。


 そしてその隙に腰のベルトから予備武器であるコンバットナイフを抜くと、しっかり握りブンブンと振りながらワーウルフの群れの隙を突き、何とか囲いを突破すると再び逃げた。


 林の中を悲鳴を上げながら情けなく駆け、必死に逃げていく。

 背後から襲ってくる鈎爪の攻撃はマントが防いでいた。

 その為、軽い衝撃を感じるに留まった。

 いつの間にか崖の上の方に向かって走っており、やがて崖の上に追い込まれた。

 そう、意図的に追い込まれたのだ。


 そこからひぃーと唸りながら戦っていたが、多勢に無勢とジリ貧だった。

 ついに角で脚を刺された。

 そいつはなんとか斬り裂いたのだが、そのコンバットナイフもついに折れてしまった。


 他に何かないか?・・・あっと唸り頭から布を外すと魔力を込めた。 

 だが、最早最後の武器だ。


「何でだよ!何で俺がこんな目に遭わなきゃならないんだよ!くそ!このままじゃ死ぬ!まだ女とやった事がないんだぞ!ラミィのおっぱいを見た事や触った事すらないんだぞ!童貞のまま死ぬのかよ!くそがぁ!」


 次々に襲われいつの間にか崖を背にしており、必死に布を振った。

 スパーンと怖い位に斬り割いて倒しているが、腕を噛まれたり頬を引っ掻かれたりと最早満身創痍だった。


 そして脇腹を刺されると晃司の意識が飛んだ。

 超人の発動だ。


 うらーと叫びながらワーウルフ相手に無双していく。

 布はいつの間にやら頭にあった。

 晃司の手にはワーウルフの角が握られており、それで倒していった。

 そして明け方、日が昇りはじめた頃についに最後の1頭を倒したが、そこで10分が経過し、更に魔力も切れた。


 傷の再生は辛うじて命を留める所で終わり、じわじわと血が出ている。程なくして気絶し、倒れると崖から滑り落ちていくも、奇跡的に途中の木に引っ掛った。


 ・・・・


 朝になりラミィは晃司との待ち合わせ場所に行くも、晃司がいない事に一抹の不安を覚えた。


 取り敢えず昨日教えられた野営地に向かったが、そこで信じられない光景を目にした。


 テントが崩壊し、荷物がその辺に散乱しているのだ。


 思わず食料を落としたが、辺りを見ると複数のワーウルフの角と、その角の分のだと思われる魔石が落ちていた。


「ど、どうしよう。晃司が・・・魔物に襲われたんだ!」


 唸るしかなく、人の気配がない事から少なく共この近くにはいないはずだと感じた。


 残念ながらラミィは追跡する術を持ち合わせていない。


 ワーウルフの角と魔石をひとつずつ拾い、慌ててギルドに向かった。

 助けを呼ばなきゃと、自分には発見できないし、ワーウルフにはどうあがいても対処できないからだ。


 ラミィは野営地にて晃司の名を叫んだが何の反応もなかった。


 ラミィは決意した。

 あの王女に頼むしかないと。

 晃司を売る事になるかも分からないが、普通にギルドに救援を求めても相手にされないだろうし、それだと遅いからだ。 

 それに依頼をするお金もない。


 そこで先ずはエリーに訴える事にした。


 ラミィは息を切らせたままエリーの前に立った。


「エリーさん、助けて!晃司が!晃司が死んじゃう!」


「落ち着きなさいよ。どうしたの?」


「あ、あの王女様に至急会いたいの!お願い!城に連れて行って!」


「ちょっと待って、そんなの無理に決まっているでしょ!落ち着きなさいって!」


「晃司の野営地がワーウルフに襲われていたの。これが落ちていたの!」


「ワーウルフの角と魔石ね、それで?」


「あの手配書は晃司の事なの!だから逃げようとしていたの。数日間野営して、ほとぼりが冷めたら外国に行こうとしていたの。だけど野営している所を襲われたの!助けて!」


 支離滅裂な為、エリーの質問に答える形で話が進み、漸く詳細が見えてきた。その為、エリーが一緒に城に行く事になった。


 他の受付に王女様に呼ばれたから暫く出掛ける旨を告げ、急ぎ馬車で向かう。


 城に着くとひと悶着あったが、エリーの容姿もそうだが、門番と揉めているところに騎士の1人が通り掛かった。

 偶々その者はエリーが第3王女の従姉妹だと知っており、召喚者絡みの情報を持ってきたと伝えるとあっさり応接に通された。

 それと、話の真偽の為、嘘発見装置も持ってきて貰った。


 2人はまず魔道具の起動とテストを行なう。

 テストは簡単だ。

 因みに今日は快晴だ。  

 今日は雨が降っていますと言うと反応があるが、今日の天気は晴れていますと言うも反応がない程度だ。


 程なくして王女が慌てて駆けつけた。


「ようこそおいでくださいました。第3王女のアモネスですって貴女確か昨日ギルドにいらした方ですわね。エリー、貴女がここに来るだなんて初めてではありませんか?城に来るのをあれ程嫌がっていたのに」


「うん。ごめんね。緊急事態なので、挨拶とかは後にさせて。それとこの子は冒険者のラミィさん。話の前に大事な事だから短的に聞くけど、あの手配書の人を貴女の所に連れてきたらその人はどうなるの?それと何者なの?手配書には何もないのよ。あと悪いけど、嘘かどうか確かめるから、1度軽い嘘を言ってから返事をお願いね」


「私はエリーが大嫌いよ」


「うん。反応が有るわね。お願い」


「はい。手配書の御方は私が召喚術を使い召喚した時に事故が起こり、行方不明になってしまったはずの御方です。今朝も召喚術を使いましたが、間違いなく生きておいでです。私達は勇者様を保護しようとしております。それに最大の敬意を払い、国賓として迎え入れて勿論厚遇する為ですわ。これで良いかしら?」


「あのう、じゃあ、捕まえてまた鉱山送りにしたりしないのですか?」


「何故それを?その御方は今何処に?」


「大事な事なんです!」


「落ち着いて下さい。今言ったように、国賓として丁重におもてなしをし、その御方が殿方でしたら私を含め女性を何人か宛てがってお世話をしますし、私は既にその御方の妻、又は妾として貢がれる事が決まっております。そう命ぜられておりますし他の者も幼少の頃より勇者様の妻に相応しい教育と、それを夢見て育てられております。勇者様は異世界から呼び寄せており、その方の人生を奪うのですから私は身も心も捧げる覚悟があり、既に同意もしております。死ねと命ぜられればその場で舌を噛み切り果てましょう。形式だけでも私を妻として娶れば王族の一員になりますから、魔王討伐後の生活も安泰かと思われます。勿論ラミィさんが正妻で問題ありません」


 ラミィはその内容に「えっ!」っと唸り、目を見開いて驚くのだった。

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