第15話 野営と神々の褌
晃司とラミィは薬草採取に向かうと告げ、エリーと別れた後1度宿に戻った。
そして晃司の荷物を取ってから再び出掛けた。
晃司的には暫くこの宿にて泊まる事はないのだろうなと、僅かな間の宿だったなとため息をついた。
お金の方は銀貨5枚程を手持ちにし、残りはギルドカードに入れている。これが一番安全なはずだ。
向かうのは前回と同じ中級者向けの採取場所だ
前回と同じように晃司が探し、ラミィが採る、それを繰り返していた。
夕方近くまで薬草を採っていたが、幸いな事に弱い魔物しか出なかったのもあり、満足出来る量が採れた。
道中確認していたが、野営に適した場所を見付けていたので、そこで野営をする事にした。
採取した薬草を全てラミィに預けた。
晃司は野営の準備に入る事になり、街道までラミィを送ってから別れた。
この辺りはラミィも普段は1人で来ていたし、人の往来がそれなりにあるからまあ大丈夫だろうと。
晃司も何も知らなかったが、一見野営に最適な場所に見えるのだが、危険な為に野営をしてはいけないような場所であった。
水には困らないが、雨が降ったりして増水した場合は困るが、今は天気がいい。
日が落ちる前に晃司は薪になるような木を拾い集めており、30分程で薪が集まったので、ずぐに薪火をする事にした。
道具屋にて使い捨ての着火の魔術布を買っており、魔力を込めると数分間火が点くという物で、それで火を点ける。
魔石でも代用できるが、使った魔石の魔力が消えるまで火が消えないので、咄嗟に消す事が出来ない。
魔法使いでも火属性に適正がない者は、野営でこれらの布を活用するとラミィから教えられていた。
初めて使うのだが、布は薪の下に入れその布に魔力を込めると炎が上がった。
程なくして薪に火が着き晃司はホッとした。取り敢えずテントを出して設営し、毛布を準備する。
薪の周りには石を組んでかまどをこしらえていた。
キャンプが好きな親に連れられ、子供の頃はよくテントを張っていた。
なので野営自体は問題なかった。
川から汲んできた水を鍋に入れ、火にかけて沸騰させる。
水筒に残っている水はコップに移し、沸かしたお湯を水筒に入れた。
また、沸かした湯に保存食の豆を入れ、薬草採取の時にラミィから食べられる山菜を教えてもらい、それらも採っていて豆と一緒に鍋に入れた。
それをスープ代わりにし、堅パンを浸して食べていた。
焚き火を大目にして少し休む事にした。
いや、しちゃったのだ。
危機感もなく、夜中は特に危険な魔物が多く彷徨く時間だというのを知らなかったのだ。
魔物がいなかったとしても獣が彷徨いているだろうに。
ふと夜空を見上げると見た事のない星の並びだ。プレアデスもないし、オリオンもない。
勿論北斗七星も夏の大三角もだ。
しかも肉目でアンドロメダ銀河よりも大きく見える銀河が2つある。
見掛けの形も違う。つまり通称天の川銀河以外にいる事を、又は反対側の腕の星の何処かにいる?と感じた。
なんで俺はこんなふうに逃げ隠れしなきゃならないんだよ!と涙が出てきた。
毛布を敷き、コートを掛け布団代わりにして荷物を枕とした。
火を炊いていれば獣は来ないだろうと思ったのだ。
間違いではないのだが、かなり無謀な事をしていた。
明け方近くに尿意から目が覚めたので、川で用を足した後に手を洗い、火が消え掛かっていたので木を焚べると炎の勢いは盛り返した。
もしもこの時に戦闘感が鋭かったならば、周りに危険な魔物の気配を感じ取れただろう。
偶々火が苦手な種類だった為に襲ってこなかっただけだ。
お湯を沸かしてから粗末な朝食を摂り、顔を洗ったりしてからラミィとの合流地点に向かうべく野営地を撤収する。
テントをたたみ、背嚢に毛布と一緒に括り付ける。
ふとまだ少し早いなと思い、晃司はコートと汚れた布を川で洗った。
コートはくたびれてはいるように見えていたが、汚れが落ちると色がくたびれているように染められているのだと分かった。
しっかりしており生地はかなり強い。
ひょっとして矢位防いでくれるかなと思う感じだ。
ボロいなと思ったのは汚れが付着していたからで、かなり上等なコートというか、ローブのようだ。
また、布は驚いた事にかなり丈夫で、洗った後は神々しくさえ感じられた。
妙にアンモニア臭がしていたなと思うも、洗うとそんな匂いもどこにやらだった。
ふと思い、魔力を流すとぴしっと硬い板のようになり、握ってからもう一度魔力を流すと武器として使えそうだった。
試しに河原にあった岩へ振ってみたが、岩はバターのように綺麗に切れていった。
ただ、1度魔力を流すと魔力がかなり吸われ、10秒程でその魔力が切れて柔らかい布になる。
かなりの魔力を持っていると思われる晃司でも、日に数分間行うのが限界かと感じられた。
また、少し気になりこの布を木の上に置いてナイフで刺すも穴は開かなかった。
さて、この布どうしてくれようかな?と思うも、取り敢えず頭に巻くと、少しだけ魔力を吸われたが頭にしっかり巻き付き、首を振ってもバク転をしても外れない。
だが、手で障ると簡単に外れるのだ。
おお!と唸る。
普段は頭に巻き、ヘルム代わりにする。
いざとなれば武器にもなる。
チートアイテム?と思うもその辺に落ちていたから、実はその辺で売っている物なのかな?位に感じていた。
晃司は凄いなと思って頭に巻いているが、これはとある神が落とした褌、それもかなり使い込んだ物だった。
だが、悲しいかな知るのは今ではない。
とある神が股間をガードするのに使っていたのだ。
股間を蹴りつける女性の神がいて、昔潰され掛けたので、ガードの為に下着として使っていた。
そんな折に召喚エラーに巻き込まれてしまった少年を発見したのだ。
このままだとこの少年が死ぬと理解した。
その世界に干渉出来るのが残り10秒程であり、何かしてやらないと!となったが、下界に落としても大丈夫なのが普段着ているコートと今身に着けている褌位だった。
時間がないので慌てて下界に落とすも、狙いが逸れたのだ。
褌も綺麗にしてあげられなかった。干渉できるのがこれまでで、この少年を覗き、干渉できる穴が塞がる直前にこのあと少年が辿り着くであろう所に落下させるのがやっとだった。
注)神様が身に着けていたから当然多少の小便が着いています・・・アンモニア臭は単に小便が染み込んでいる臭いです。哀れ・・・
それと担当した女神へ邂逅できるよう計らい、その時にやらかす事を上司としての裁量範囲内として指示した扱いにした。
しかし、この少年は猜疑心から自らの首を締める行動を、折角なんとか召喚した当人と面と向かう機会を与えたが、庇護下に置かれて厚遇までされるのにその機会を猜疑心から逃してしまい、更に苦境に立つ羽目になる。
神も多少の人の動きを誘導するのが精一杯であり、褌、それも身に着けていたので臭っているままの状態で落とす位しか出来なかったのであった。
考えてみて欲しい。
使用済みの褌、それも他人の小便が染み付いた布を頭に巻こうとするだろうか?
あまつさえ顔を洗った後顔を拭けるか?
否!
普通の神経をしていれば命の危機に陥り、選択肢がないのを別にすると、是とする者は皆無だろ。
事実を知った時に晃司の精神が持ち堪える事を皆で祈りましょう!合唱・・・いや合掌・・・
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