第14話 逃避行の準備と浴場

 晃司はラミィと主に食材を扱っている店に行き、保存食を中心に買い込みその後テントや毛布を買っていく。

 1人用、無理をすれば2人が入れる小型のテントと鍋を1つとそれの蓋だ。


 晃司は逃げなければと思うも、今から王都からいなくなれば真っ先に疑われる。

 少なくとも明日は神殿の風呂に行かなければならない。


 作戦を考えたが、今の所熟考出来ないので、概ねで考えた内容だ。


 晃司は明日ラミィと薬草採取をした後、町には入らず野営をすると決めた。

 町にはラミィのみが入る。


 町から30分位の所に野営場所を探して、採取した薬草や魔物を倒したらその素材とギルドカードをラミィに託す。


 それを数日してから王都を離れ、取り敢えずラミィの故郷を目指す。そこで1泊してから他国に向かうと。


 色々な国を訪れて見聞を広げたいとすれば、先ず怪しまれない。

 だが、事を急くと疑われるからまだ数日は王都から離れられない。


 その為に野営の道具を買うのだ。煮炊きや焼くのも鍋1つでやるしかない。

 そうしないと荷物が大変な事になるからだ。


 歩きながらラミィに話していた。

 ラミィはついて行くという。晃司は嬉しかった。

 明日からの事について話をしていく。


 ギルドの受付は毎回変える。エリーさんには数日したら色々な国を旅して回わり、1、2年位でまた戻ると。


 何故と聞かれたら、昔から1度は色々な国を回ってみたかったが、信頼できる仲間が出来て、1人では断念していた夢を果たしたいとすれば苦しいが通用すると。


 歩きながら大事な話をしているのは、もしも先の王女との話で当人だと疑われていた場合、最悪のケースだと宿の会話も盗聴されていて、完全に特定されてしまうからだ。

 歩きながら話をし、自分の正体に関わる話はこうやってしようと警戒をしたのだ。


 小説の読み過ぎだった。

 警戒をし過ぎていたのだ。

 どうせならばその人は何をやったのですか?と聞けば万事解決だった。

 下手に聞いて注意を向けられたくはなかったのだ。


 変な所に頭が回るのが仇となってしまった。


 カモフラージュの為に服を3着買った。


 1着はこれからの服、もう2着は今着ているのと入れ替えで、使用感のある服を宿の部屋に置いておき、万が一部屋を見られても着替えを置いている感を出す為だ。


 ラミィは感心していた。この人は頭が良いのだと。


 一通り買い物を済ませ、夕食を食べに行った。


 その後宿に戻り、湯浴みになった。


 女性用に誰もいなかったので入り口をラミィが見張り、晃司は魔道具全てにチャージをしていった。


 そうして湯浴みを終え部屋に戻ると、晃司はラミィを自分の前に座らせ、髪を梳いてあげた。


 絡まりが激しく、1時間程やっていた。

 ラミィもされるがままにしていたが、嬉しかった。


 少なく共王都に来てから誰かにそのような事をしてもらっていなかったからだ。


「よし!これでサラサラヘアーとまではいかないけど、櫛が通るのじゃないかな?」


「ごめんね」 


「ラミィ、こういう時はね、ありがとうって言うんだよ!謝る事なんか無いさ。おれも女性の髪を梳くのって嫌じゃないし」


「うん。晃司、ありがとう!」


 その日は穏やかに過ぎ、穏やかに眠りについた。


 特に間違って胸を揉むでもなく、普通に目覚めた。


 何の事のない、ごく普通の1日の始まりにしか思えない朝を過ごした。

 朝食の後ギルドに行き、エリーと合流してから神殿の浴場に向かった。


 そこは思い描いたザッツ神殿で、晃司はスゲーな!と唸った。


 エリーに付いて行き、裏方から入ると神殿に仕える神官が出迎えてくれた。


 案内されて浴場の裏方にある10畳程の部屋に入るとそこには一際大きな魔道具が鎮座していた。


「ここに手をかざせば良いのですか?」


「はい。手をかざすと気絶しない範囲で魔力を吸われますので。もしも満タンになりましたら1度光りますので、宜しくお願いします」


 晃司は言われるがままに手をかざしたが、数秒で魔道具が光った。


「凄いですわね!ひょっとして殿方用のも行けたりしますか?」


「よく分かりませんが試してみますか?」


「ではお願いします。こちらになります」


 エリーはかなり驚いていたが、ラミィはそうではなかった。凄いなとは思うが異世界から召喚されたと聞いているので、なるほどとしか思わない。


 そして隣の建物に移動しほぼ同じ形の魔道具に手をかざしたが、やはり魔導具が光り、魔力チャージが完了したのだと分った。

 念の為神官がお湯が出る事を確認して、大いに驚いていた。


「す、凄いですね!私、男女共に行ける方を始めてみました」


 晃司はため息をついていた。

 既に話をしていたからやらざるを得なかったが、エリーにも変に注目されるだろうと。


「晃司さんって、魔法使いなのですか?」


「いや、この前測定出来なかったじゃないですか、魔力持ちだなんて知らなかったから習っていないですよ」


「そうですよね!晃司さんは魔法を習ってみないのですか?」


「お金が掛かるのでしょう?有り難い話ですが、僕達はその日暮らしで、小銭を稼ぐのがやっとなんですよ。蓄えもないですし、そんな余裕は無いと思います」


「あの子に頼んじゃおうかな?」


「あの子って?」


「何でもないです!」


「そうですか。取り敢えず、俺は魔力持ちって事だよね」


「多分宮廷魔道士以上かな!だから、ちゃんと学べば宮廷魔道士になれるのかなって」


「そうなんですね。えっと、もっと稼ぐ事が出来て、生活が安定したらまた教えて下さい」


 そうして対価として8万Gを受け取った。


「晃司様、私共はいつでもお待ちしております!この時間迄に来て頂く事が可能でしたら、この後も是非ともお願いしたいです。どうか宜しくお願い申し上げます」


 そうして深々とお辞儀をされ、神殿浴場を引き上げるのであった。

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