5 クォーツ学園
馬車に揺られること一日と四時間余り、外を見上げると見たことのない高さの外壁が佇んでいた。
「やっと着いたな、ここが王都か…」
検問を突破し、王都の中へと入る。
「兄ちゃん、この辺でいいかい?」
「はい、長い間お世話になりました」
「構わないよ、これが仕事だからね」
馬車の運転手に会釈をし馬車を降りる。
初めて来る王都に驚きを隠せない中、マレはさっそくクォーツ学園へと向かった。
人混みの中をかき分け目的の場所へと向かうマレは看板に【クォーツ学園入試会場はこちら】と書かれた看板を発見した。
「てことはここがクォーツ学園だな」
ここが僕が剣を学ぶ場所か。
世界中から剣の猛者達が集まる場所だ。
強そうな奴はいるのだろうか。
マレは辺りを見渡す。
辺りには体格が物凄く大きな者であったり、レイナ先生から教わったエルフ種の者、見たことのないような形の剣を持っている者、多種多様な受験者がいた。
「これはここに来たかいがあったかもしれないな」
すると後ろから誰かに話しかけられた。
「おい、お前まさかその腕でこのクォーツ学園を受けに来たのか?」
「……この腕がどうかしましたか?」
「だからその腕でどうやって剣を振るうんだよ」
少年の声で周りの受験生の注目の的となった。
「ほっといてくれませんか…」
「嗚呼、分かったよ。どうせほっといても不合格だろうからな。まあ精々頑張れよ」
試験前に嫌なやつに絡まれてしまった。
別にこの腕に関して何を言われてもどうってことはないが試験前に目立ちたくはなかったな。
そして試験時間となり、試験官が建物の中から出て来た。
「受験生の皆様、只今から試験が始まります。最初は筆記試験です。こちらへお越し下さい」
試験官に催促され、決められた部屋へと行く。
「それでは試験を開始します。始め!」
どんな難しい問題が出題されるのだろうと思っていたが思いがけないほど簡単な問題ばかりだった。
筆記試験が終了し、次は実技試験の会場へと向かう。
実技の試験会場へ向かっている最中、一人の少女に話しかけられた。
「ねぇ、そこの貴方」
「…僕ですか?」
「ええ、そうよ。筆記試験の難易度どう思う?」
「やはり貴方もそう思いますか?」
恐らくこの少女も試験内容があまりに簡単すぎて何か怪しんでいるのだろう。
あのくらいの難易度だったら目を瞑ってもできるほど簡単な内容だった。
しかし少女はマレの予想外の事を言った。
「ええ、筆記試験の難易度があまりにも高すぎたわ」
「そうですよね、あまりに簡単すぎて…え?」
「あんなの問題の内容すら理解することができなかったわよ」
この少女は一体何を言っているのだろうか。
本気で言ってるのであったら本気で幼少期からやり直した方がいいレベルだ。
俺が七歳の頃でも満点が取れるレベルのなんいどだった。
「貴方はあの問題、一つも解けなかったのですか?」
「もちろんよ、恐らく他の受験者も同じよ。この学園、筆記試験で受からせる気が無いのかしら?」
「そうなのかもしれませんね…」
「だけど実技試験ではそうはいかないわ。私こう見えて剣には自信があるの。だから落ちることはないと確信しているわ」
腕にはかなりの自信があるようだ。
ここの学園を受けているあたり相当の剣技を有しているのだろう。
「凄い自信ですね…」
「それはそうよ。私は今まで誰にも剣で負けたことはないの。私はここに私より強い人を探しに来たのよ。初めての敗北を味わってみたいの」
「味わえるといいですね…」
「だけどちょっと拍子抜けね。見た感じあまり強そうな人はいなそうだし」
かなり大きな声量で言ったので周りから視線が集まる。
しかし何故か驚いたような顔をし直ぐに目を逸らした。
そして遂に試験会場へと着いた。
「ところで貴方はその腕はどうしたの?」
「小さな頃に事故にあってしまって無くしました」
「そうなのね、失礼な事を聞いたわね。ここで話せたのは何かの縁ね。もし貴方と当たったら少して加減してあげる」
彼女はそういうとニコッと笑い背を向けて何処かへ歩いて行った。
貴方と当たったらって何のことだろう。
試験官と軽く手合わせする程度じゃないのか?
「それでは時間になりましたので実技試験を始めます。試験内容は例年と同じく受験生同士で一対一の試合を行います。三戦行ない、勝利した数が多い者が合格となり、定員を超えるとその他の者は不合格となります。対戦相手はあらかじめ学園が決めさせていただきました。対戦相手はこちらのボードで確認して下さい」
受験生同士で一対一なのか。
早速、他の受験生のお手並みが拝見出来るといわけか。
マレは対戦相手を確認するためボードの元へと向かう。
そして対戦相手を確認する。
マレの対戦相手は、"ソフィア=グリード"という名前だった。
「ソフィア=グリードか、どんな相手だろう」
マレは対戦会場へと向かおうとするとボードを見ていた他の受験生の話しが耳に止まった。
「このマレとかいう奴終わったな。まさか初戦ソフィア様と当たるとは運がない奴め。恐らく二戦目からは出場することは出来ないだろうな」
「…マジかよ」
初戦からそんなヤバい奴と当たってしまうとは…。
まあ足掻いてみせるさ。
俺はレイナ先生に十年間指導してもらったんだ。
その十年間は無駄ではなかったと証明してみせる。
マレは覚悟を決めて対戦会場へと向かった。
☆や♡を是非よろしくお願いします。
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