4 巣立ち


 翌朝、マレは荷物をまとめ、家の前に立った。


 「それではレイナ先生、行ってきます」


 「行ってらっしゃい、マレ…」


 どこか物寂しそうな表情でマレの背中を見るレイナ。

 マレは足を止め、振り返ると言った。


 「レイナ先生、また直ぐに帰ってきます!どうかお元気で!!」


 「マレ、頑張りなさい!」


 「はい!」


 レイナはマレの背中が見えなくなるまで手を振り続けた。


――


 慣れ親しんだ森を抜け街道に沿って進んでいく。


 マレには学園に行く前に行かなければならない場所があった。


 「変わってしまったな」


 魔族軍の襲撃から十年経った今でも建物の破片が辺りに散らばっていた。

 あの頃のようなワーラットの姿は今は無かった。

 そして父と母もいない。

 全ての建物は跡形もなく崩壊していた。


 マレは建物の破片で埋め尽くされた道に沿って進みかつて僕が住んでいた家があるはずの場所へと着いた。

 

 「これは酷いな…」


 家の辺りを見渡す。

 すると瓦礫の下に何か輝く物を見つけた。


 「あれは…?」


 瓦礫をどかしそれが何か確認するとそこにあったのは見覚えのある一つのペンダントだった。

 

 「これは確か母さんがつけていた…」


 これは昔、母親がつけていたペンダントだった。

 マレはペンダントを自身のポケットに入れると家を後にした。


――


 ワーラットの町外れ、そこには集合墓地があった。


 「ここが父さんの墓か…」


 マレは自身の父の墓を訪れていた。

 しかしそこには母親の墓は無かった。


 「母さんの墓はどこだろう?」


 辺りには魔族軍の襲撃による被害によって亡くなった方々の墓が大量に設置されていた。

 しかし母の墓はどこにも見つからなかった。

 

 「死体が見つかっていない、のか?」


 まさかそんなはずはない。

 母さんは街を少し出たところで襲われたんだ。

 少し探せば見つかるはずだ。

 なのに何故見つかってないのだろうか。


 墓ばかりの墓地だと思っていたがマレの視線の先に大きな石碑を見つけた。

 そこには大量の名前が書き記されていた。


 「これは、墓ではないのか」


 しかしそこにはマレの名前と母の名前も書き記されていた。

 

 「なるほど、分かったぞ。これは行方不明の人たちが書き記された石碑なんだ」


 僕は生きてきたが母さんはまだ生きているだろうか。

 その可能性は皆無か。

 自分を犠牲にして僕を助けたんだ。

 

 (母さん。お久しぶりです。僕は母さんと父さんのお陰でこのように生き残ることができました。腕を一本無くしてしまいましたが無事助かりました。僕は今からクォーツ学園へ剣を学びに行って来ます。どうかご無事をお祈り下さい。それでは行ってきます)


 マレは母にそう伝えるとワーラットを後にし、王都へ向かった。




少し短くなりましたが☆や♡などをお願いします。

 


 


 


 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 


 

 

 

 

 


 

 

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