6 実技試験



 会場へ着くとそこには見覚えのある少女がいた。


 「君は…」

 「貴方は…」


 「「さっきの…」」


 「君がソフィア=グリードだったんですね…」


 「まさか本当に対戦相手だったなんてね…。でも手加減わしないわよ」


 「え…」


 さっきもし当たったら少し手加減するって言ってた気がするんだが…。


 「これは試験なのよ。貴方の腕が一本だからってけして手加減はしないわ」


 「ですよね…」


 手加減をしない、それは当たり前のことだ。

 彼女は間違っていない。


 「僕も手加減はしませんよ」


 「精々足掻くことね」


 「はい、足掻いて見せますよ」


 そろそろ試験が始まる時間だ。

 あらかじめ用意された木刀を握り、定位置へつく。


 「それでは試合を開始します。なお戦闘不能になるか負けを認めると試合終了となります」


 二人の間合いは5メートル。

 この距離だったら一瞬で相手へ届く。

 未知の相手に先手を取られてはダメだ。

 先手を取ろう。


 自然と剣握る強さが強くなる。


 「それでは、始め――!」


 合図が出た瞬間、地面を蹴り一秒に満たないほどの速さで間合いに入る。

 そして剣を振り上げ相手が防ぐ事を考慮し強く叩き込む。


 「っ!?」


 するとソフィアの手から剣が弾かれた。


 コイツ何のつもりだ?

 受け流さず僕の剣をうけやがったぞ。

 一体何をするつもりなんだ…?


 マレは剣を弾いた瞬間すぐさま相手の顎へ剣を突き付ける。

 

 「――ま、参りました…」


 「何のつもりですか…?」


 ソフィアは目を見開き、恐怖するような顔をしてマレを見ていた。


 「――は?……やっ、止め!!」


 試験官は遅れて試合終了の合図をした。

 

 「勝者、マレ!」


 すると周りにいた受験生達がマレの動きをみて皆同じ言葉を並べた。


 「おい、一体何が起きたんだ…。アイツ、一体何者なんだ?あのソフィアを一瞬で…」

 

 マレは試合が終了し直ぐさまソフィアの元へと向かった。


 「ソフィアさん、手加減はしないはずではなかったのですか?」


 「手加減なんてしてないわよ……」


 「ではなぜ受け流さなかったのですか?」


 「貴方が異常なのよ…。何であんな速く動けるの?あんなの受け流せるわけがないじゃない…。貴方一体何者なの?」


 「…僕はただの剣士ですよ」


 「…そう…」


 「後二試合残っています。お互い頑張りましょう」


 「そうね…頑張りましょう…」


 そしてマレはソフィアと別れた。


 その後、二試合とも相手が一歩も動くこともなく勝利した。

 二人ともマレの腕が一本ない事をいいことにマレに舐めてかかってので二人とも気絶させてしまった。


 数日後。

 マレが泊まっている宿に一つの手紙が届いた。

 それはマレが学園に合格した合格通知だった。


 「合格したのか」


 実技では三勝、筆記試験では恐らく満点だろう。

 だが合格するという確信はなかったので少し安心した。


 しかしその手紙には合格通知以外にも書かれていることがあった。


 「何だ?"貴方の試験結果はとても優秀でした。よって貴方を特待生として入学する事を通知いたします"、だって?」


 特待生って何のことだろうか。

 まあ少し試験の点数が高かっただけだろう。

 合格に間違いはないはずだ。


 そして入学式当日、マレは荷物をまとめて宿を出た。


 学園へ向かう途中、聞き覚えのある声に話しかけられた。


 「マレー!」


 「貴方は確か――」


 「ソフィアよ。私も合格したわ。やっぱり貴方も合格したのね」


 「はい」


 「一緒に行きましょ!」


 「そうですね」

 

 学園で友達ができるか不安だったが入学初日で友達と登校とは俺の学園ライフは幸先が良いな。

 ていうか勝手に友達と言っているが良いのだろうか。

 ずっと森の中にいたせいで友達なんて出来たことないからそこら辺は分からないな。


 そんな事を考えていると学園へ着いた。


 「今日からここで剣を学んで生活をするのね」


 「楽しみですね」


 「そうね…」


 ソフィアは不安そうな表情を浮かべた。


 「どうかしましたか?」


 「私一人で生活するの初めてなの。いつもは全てメイドに頼んでいたから少し不安で…」


 「メイドですか…」


 確かソフィアさんは家名があったな。

 てことは貴族なのか。

 貴族ならメイドが家にいてもおかしくないな。


 「大丈夫ですよ。なんとかなりますよ」


 「そうよね!」


 そして入学式の受付へと向かった。


 「合格おめでとうございます。お名前を伺ってもよろしいですか?」


 「マレです」

 「ソフィア=グリードです」


 「マレ様とソフィア=グリード様ですね。…なんとマレ様は特待生に選ばれていますね」


 「何ですって!?」


 耳元でソフィアが叫んだ。


 「マレ、貴方特待生に選ばれたの!?」


 「そうみたいですね」


 「そうみたいですねって、貴方特待生がどれだけ凄いか知ってるの?」


 「あまり詳しくは知らないです」


 「筆記試験では満点、実技試験では三戦三勝で試験官の目に止まった受験生のみが選ばれる物なのよ?私が聞いた中で今まで特待生に選ばれた人は貴方を抜いて一人、剣神のレイナ様だけよ」


 「剣神のレイナ様って…レイナ先生もクォーツ学園へ行ってたんですね…」


 「貴方レイナ様をレイナ先生って呼んでるの?あまりそんな呼び方しない方がいいわよ。レイナ様をものすごく慕っている人にあまり良いように思われないわよ」


 「そうなんですね。分かりました、気を付けます」


 「そんなことより貴方本当に何者なのよ…」


 「まあそんなことどうでも良いじゃないですか。早く入学式へ向かいましょう」


 「そんなことって…。そうね、行きましょうか」


 マレとソフィアは入学式の会場へと向かった。


 

 


 


 


   


 

 

 


 


 


 


 

 


 


 


 


 


 

 

 


 

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