【06】
「吠えたな
僕の宣言が聞こえたのだろう、さらに怒りを上乗せした長槍の切っ先がもう数歩先の位置まで迫っていた。
まともに喰らえば当然、革鎧などあっさり貫通しての串刺し確定だ。
だから僕はそこで腰を直角に曲げ、思い切り頭を下げた。
「な!?」
その動きで
そし暗黒騎士の槍が向かう先は、露わになった
「なんだ、これは――」
いま僕の位置から
――そこには、彼の鎧よりなお濃くて深い、真の闇が広がっているはず。
「くっ、離せっ!」
その闇にずるずると呑み込まれていく槍を引き戻そうとして、暗黒騎士の両脚に力が込もる。それが、頭を下げている僕にはよくわかった。
「このっ!」
このままでは埒が明かないと判断したか、中腕の黒い双剣で
「なんだ、これは! いったい、何を飼っている?!」
暗黒騎士の、さっきよりだいぶ切迫した声を尻目に、僕は
瞬間、見上げた横目にちらりと映ったのは、黒剣にからみつく紅くて長い
「
暗黒騎士の背後で
「……なんだと……」
絶句する暗黒騎士。まあ、冒険者協会なんて組織はとっくの昔に魔蹂将の手で壊滅済みだけど、定められた各種の
「
彼が必死に引き離そうともがく背後で、僕は淡々と解説しつつ、両手から【
神話によれば魔族の始祖は、世界の北端に連なる魔山嶺の火口、マグマの底から生まれたとされ、そのせいか魔族は一般的に寒さへの耐性が低い。
もちろんこれで倒せるとは思っていない。だからこそ自動迎撃も僕に反応しないのだ。
けれど鎧の中身が僕の予想通りなら、それなりの効果はあるはず。
「……で、収納品の出し入れふくめ、
ちなみにその
「う、お──おおのれえええ!」
怒りと憎悪と――そしておそらくは寒さに震える雄叫びを上げながら、暗黒騎士が後方に跳躍して離脱するのを、僕は真横に転がりながら避けた。
そのまま
そして、すかさず暗黒騎士の状態を視認。
初手で下敷きにした右下の手と、槍ごと
迎撃時しか動かない上腕もあわせて、彼が六本腕の異形の巨人ではなく、巨大な鎧を内部から魔力で操る「
中段の手の黒い双剣が見当たらないのは、
忘れてはいない。相手は、素手で石像の頭を粉々にする剛力の主だ。まともにやり合えば相手にならないことはわかっている。それでも。
――いま、ここで決める!
僕は【
「クッ――!」
兜から洩れる短い嘆息。手斧をかまえて迎え撃つ彼はしかし、再び
「喰らえっ!」
僕はショルダータックルの体勢で突っ込む。
最後の踏み込みに【
受け止めようと身構えていた暗黒騎士は、想定以上の大質量の直撃を受けてたまらず背中から石畳に倒れ込む。
そう、
「【
日々、【
それはいわば器用貧乏の向こう側──
「――【
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