第4話 娘からの「アイ・ラブ・ユー」
どうもボクは、最近おかしい。見えないはずのものが見えたり、亡くなった人と会話してみたり。ボクはあまり想像力が豊かなタイプではない。どちらかというと現実のデータを元に、仕事を進める理工系の人間だ。
それがありえないシチュエーションで、ありえないような会話をしている。
ボクは何かきっと不思議なことが作用しているのではないかと思う。こんなことがあった。
事故が起きてから3か月くらい経って、家族3人で暮らしていたマンションに戻って、生活をし始めたころの話だ。朝、突然。瑠梨の声で、「わたしのタンスの上から2番目の引き出しの中を捜してみて」
という言葉が聞こえた。
頭の中で響くように、まわりに誰もいないのに、その声ははっきりと聞こえた。
ちょっと不気味だったけど、ボクは瑠梨に言われたとおり、寝室にある瑠梨が専用で使っているタンスの上から2番目の棚を開けた。
そこは瑠梨の下着を保管している場所だった。それでちょっと罪悪感を感じながら、その棚の中を捜してみると、一通の手紙が出てきた。
真子が気に入っているキャラクターが書かれた封筒に、かわいらしい柄の便せんが入っている。広げてみるとクレヨンで「パパおたんじょうびおめでとう。いつもニコニコ。おしごと、がんばってね」と書いてある。
そうだ、そういえばその日はボクの誕生日だった。便箋の下の方に瑠梨のメッセージも書かれていた。
「この手紙は真子が初めて書いたものです。大切にしてくださいね。お誕生日おめでとう」
どうやら、事故のせいでボクの頭がおかしくなった。というだけの話ではなさそうだ。
ちゃんと瑠梨と真子は今でもボクを見守ってくれる。この手紙がその証拠だ。ボクにはそうとしか考えられなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます