√c 自称宇宙人

3 - c - 1 自称宇宙人ー地球外知的生命体ー

 超能力者の転校生による世界維持、未来人による過去改変のための時間遡行の理由を解明した私は、次に宇宙人だと自称する人物のところへ向かった。何だか順番があべこべになっている気がするが、おそらく気のせいだろう。謎や不可思議を解明するのが我が秘密結社同好会の目的であり、存在理由である。他の不可思議が気になる方はそちらの活躍も見ると、この不可思議への理解が深まるかもしれない。



 

 その人物は旧・旧館校舎にて待ち合わせをすることとなった。宇宙人だからどのような通信手段を、と思っていたのがなんてことはない。メールでやり取りができた。日本語も使いこなしている。思ったより馴染んでいるようだ。ちなみにうちの学校には新・新校舎、旧・新校舎、新・旧校舎も存在する。



 旧・旧館校舎は現在文化部の部室棟として使用されている。また、音楽室や実験室等はこちらにあるので、移動授業の際はここまで来なければいけないのが手間である。



 指定された教室を尋ねると、そこは旧第二文芸部であった。文芸部は一時期ものすごい人気があり、部活や同好会活動を必須としている我が校でも一番だったほど。なぜかはよくわからないが、何かのアニメが理由だった気がする。今はその影だけが残り、第一文芸部も人数はかなり少なかったはず。



 元第二文芸部の使われなくなった空き部屋は、鍵も無く、埃がつもり、蜘蛛の巣が隅に張られていて、人による使用感は感じられなかった。



 このような教室は大抵秘め事に使われるというのが鉄板であり、常套大道であろう。若いカップルが人目を盗んでイチャコラし、その先まで。ふむ、けしからん。……と思いたかったが、そのような痕跡は微塵も見当たらなかった。埃がズレたあとも無い。床は紙くずと枯れ葉のみ。タバコなどもなし。ふむ。不良にさえ使われていないのか、不良がいないのか。いないなら、それは良いことだけど。



 待ち合わせ時刻から二十分が過ぎ、これは悪戯だったかなと思い始めた時だった。目線を下げて上げたときには、そこにいた。



 声も出なかった。 



 音もなかった。



 彼女は、そこに静かにいた。



 更に驚く。


 

 人の形をして入るが、足が地についていない。ガスのようにもやが掛かっている。どこか気温が下がり、冷たくなった気もする。これは普通ではないと、そう思えた。



「ごめんなさイ。遅れましタ。ええと、ヘイさんですカ?」



 語尾に違和感のある喋りだったが、意味は通じる。そして、遅れたことと私の名前を出したこと。どうやら、この少女が宇宙人のようだ。



「大丈夫ですよ。はじめまして、黒川要黒ヨウヘイと申します。お名前を伺っても?」



 ああ、と彼女は漏らして、



「挨拶、自己紹介ですネ。こちらではそうするのでしタ。私はエクストラテレストリアル。地球外生命体という意味ですね、略してイーバとかETとか、エデン・レイとか言いまス」



「え、エデン・レイ」


「はい。私の名前です」



 今度はきれいな日本語だった。時折混ざるのかな。いや、それにしてもーー。



「失礼かもしれませんが、エクストラテレストリアルというのは英語ですね。地球における、英語圏で話される言語の言葉。今私達が話している日本語とは違う文化圏のーー」


「ああ、大丈夫ですヨ。地球のことはだいぶ調べました。便利ですね、インターネット」



 呆気に取られていた。私がぽかんとしている間にも、彼女は自己紹介を始めた。



「OGLE-2005-BLG-390Lb。地球に置いてこの名称で存在を確認されている惑星から来ました。長いのでオグルとでもしますカ。地球のだいたい5倍ぐらいの大きさで、太陽のような恒星の周りを地球のだいたい十倍掛けて一周しまス。表面温度はマイナス二百度くらいですかね、文明はここまで発達してなくて、ほとんどが氷と水です。移動は地球で言うワープをつかいまス」


「ワープ?」


「はい。氷と言っても地球の氷と違いまして、オグルの氷は土のような感じです。冷たい土ですかネ、はい。で、そこには鉱石みたいな物質がありまして、鉱石ではないのですが、便宜上鉱石という名前使いますと、テラという鉱石があるのでス。このテラはテラ同士が共鳴と言いますか、こうリンク? しまして、うまく使うとワープできます。テラにもレア度の高い、と言いますか、希少度がありまして、この間未知のテラを見つけましたときにここ、地球へのワープに成功したのです」



 もう、ただ頷くだけだった。知らないことが、不可思議が溢れている。面白い。そう思った。それら不可思議を裏付けるかのような寒さと霊体のような姿。長く足元まで伸びた髪は白色だけれど青に近い。人間のように繁殖するのか、女性らしい姿で胸が非常に豊満に見える。体型は人間界で言うスリムに正しく、百人の男全員が指笛を鳴らす美であった。しかして、どこかあどけなく幼く見える少女という言葉が当てはまる容姿であり、もっと、話していたいほどに好みであった。


 

 これは新たなラブコメ開始か!



 と思った時、終わりは唐突訪れる。



 どうやら彼女にとって地球は暑いらしい。環境に適応できないことはないが、日本という国は暑すぎるとのことで、限界時間があるそう。



「地球を侵略したいと思いますよ。ぜひとモ、弟子にして教えて下さい」



 侵略の意味を理解しているかはともかく、地球にはとても関心があり、多くを学びたいと言ってくれた。地球外の美少女が弟子になるなんて、超萌えるぜ!



 私は次にまた来る予定日を聞き、レイと別れた。




 結論:保留。今後も調査を継続する


 

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