√b 未来人

3 - b - 1 自称未来人Ⅰ ー最重視最重要課題人物ー

 地球外生命体の侵略、超能力者の転校生による世界維持について解明した私は、次に未来人だと自称する人物のところへ向かった。何だか順番があべこべになっている気がするが、おそらく気のせいだろう。謎や不可思議を解明するのが我が秘密結社同好会の目的であり、存在理由である。他の不可思議が気になる方はそちらの活躍も見ると、この不可思議への理解が深まるかもしれない。



 さて、待ち合わせは食堂とのことだった。食堂は新・本館の校舎から校庭の左右を通る長廊下を渡った先にある旧・本館校舎内にある。ちなみに、新・旧館校舎と旧・旧館校舎もある。



 食堂にて麻婆豆腐を食して待つ! 



 ……と、本人よりメッセージを受け取っていた私は、すんなりとその人物を見つけることができた。放課後に麻婆豆腐を、しかも大皿で掻き込んでいる生徒は他にいなかったからだ。



「同席、構わないか?」


「ええ。どうぞ……秘密結社同好会のヘイさん」


「……! なっ、なぜ私の名前を」


「簡単よ。私が未来から来たからよ! あっはっはっはっはっはっはっ!」


「……お静かに」


「はい」


「それで、未来人のお嬢さん。お名前は?」


味楽来みらく玖瑠実くるみ! 年齢は禁止だから駄目! この世界では16歳。高校一年やってます!」


「……お静かに」


「はい」


「ええと、それでは玖瑠実さん。はい、スプーンを振り上げないで、はい。ええと、未来からなぜこの時代に来たのですか?」


「え? 疑わないの?」


「あ、疑うべきだった?」


 首を横に振る玖瑠実氏。まだ麻婆豆腐は二割も食べていない。


「普通信じてもらえないから。頭のおかしな子だな、で終わるから」


「なるほど」


「見ての通り小柄じゃない? 幼く見えるのかな? だからなのか、だいたい撫でられて終わる」



 気持ちはよくわかる。撫でたくなる可愛さでいらっしゃる。



「秘密結社同好会は秘密や不可思議を解明することが目的で活動しています。だから基本的に不可思議を否定することはしません。たとえ真実が嘘でもそれは構わない。事実が異なっていても文句は言わない。私達なりの視点で調査し、判断していますから」


「だれが?」


「姫様です」


「あー、あの人。あの人は厳重注意だね。ヘイさんほどではないけど」


「私ほどではない、とおっしゃいますと」


「ヘイさんは最重視最重要課題人物に厳重に指定されていますから」


「……な、なんて?」


「だ! か! ら!」


「……お静かに」


「はい」


「ええと、最重視最重要課題人物。こないだのやつにメールした。やっぱこの時代不便だな、ううん」


「未来のメッセージのやりとりは違うんですか?」


「それは制限。違うといえば、違うかな」



 なるほど。どうやら話すことができる事柄に各々禁止、厳重注意、制限、などと区分があり、話せる範囲が決まっているようだ。



「すみません、話を戻しますね。なぜこの時代に来たのですか?」



 麻婆豆腐を飲み込んでから、はっきりと彼女は言った。


「未来にとっての不都合をこの時代で解消するため。だからヘイさん、あなたに会いに来た」


 

 ※ ※ ※




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