3 - a - 2  自称超能力者Ⅱ ー目的ー

 超能力。それは漫画やアニメ、小説などのフィクションで描かれるものと異なると彼は言う。かなり言葉を選んで話している以上、抽象的な言葉が増えてしまうのは了承願いたい。



 さて、現実の超能力というのは曰くもっと現実的で、そこまでたいそれたことではないのだが、しかし、それは明らかに超常的事象であるのだという。



 事象そのものは状況によって変化するし、それらを分類化することもできないことはないという。わかりやすく言えば、物質の移動・変化、環境・空間の変化、現在から見て未来における事象の把握……などであるという。それは細分化すれば非常に細かくなり、一億以上の名称をつけることができるらしい。一重に超能力とまとめるのには、理由があり、それは現状維持のために行使される能力を超能力と指すからだそうだ。



 現状維持。



 ここで言う現状維持とは、理不尽かつ不可思議、つまり科学的に説明ができない事象・状況が発生し、世界そのもののことわりが狂うことを防ぎ、地球が地球であり、銀河が銀河であり、宇宙が宇宙であることを維持し、世界が置き換わるまたは書き換わる事を防ぐことであるという。修整や加筆は常に行われていることらしく、それ自体は構わないという。生物の進化、大陸移動、超新星爆発、新星などがこれに該当するそうだ。たとえば、人類の誕生や進化は加筆。アイスを買いに道を右へ曲から行くのと、左へ曲がって行くこと。最終的にアイスを購入するのであればこれは修整、といった風にだ。



 しかし、世の中にはこの理から外れることもないわけではないのだという。



 タイムトラベルがいい事例らしく、漢字にすると“”時間遡行“”となり分かりやすい。遡行、つまり“”逆らってのぼる“”のだ。何に? もちろんこの場合は時間である。



 時間遡行することは本来あってはいけないこと、つまり理に反し、世界の現状維持から逸脱するらしい。そしてこの時間、つまりこの時代にそのような人物が現れたのだという。2000年に現れたジョンタイターじゃあるまいし。


 

 超能力者の任務は時間遡行者の取締りだけではなく、多岐にわたるのだと話は熱を帯びてきたのだが、私はこの辺りで話を閉じた。やはり根拠もなく話されては、信じたくても信じられない。信じられるものも信用できない。超能力を発揮できる条件が整った時にまた呼んでもらうことにした。



〉結論:保留。今後も調査を継続する。






 

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