第12話・トンズラ

 エメリオたちがリビングの探索を続けている中、唵妙迩はひとりで地下室を探索していた。


 電磁波を計測するEMFを構えて、灯りの点いてない通路を進んでいると、ブレーカーボックスを見つけるが、蓋を開けてみると、フューズが飛んでいる。


「そっちにフューズ無いかな? あれば家の電気つけれるんだけど‥‥‥」


 唵妙迩はリビングを探索している二人に尋ねると、ちょうど探索を終えてキッチンにいたパトリシアがコンロの上にあるキャビネットに筒状のモノを見つけて「それっぽいのをキッチンで発見!」と答えると「じゃあ、地下室まで持ってきてもらっていい?」と頼んできたため、パトリシアはエメリオと一度別行動を取ることに‥‥‥


「エメリオちゃん、私がフューズを届けに行っている間に2階の探索をお願いしていい? 爆竹渡しておくから‥‥‥」


 パトリシアはそういってエメリオに爆竹を渡すも「ヤダヤダァ! あたしも一緒に行くぅ!」と駄々をこね始める。


 チャット欄でも「さっきの怪現象がトラウマになってるw」「こんな幽霊が出る廃屋で単独行動すること自体が正気じゃねえんだよな」「パト姉が探索行けばいいだろ。警察官でしょ?」などエメリオを擁護するようなコメントが流れた。


パトリシア「じゃあ、フューズ届けに行って? 私が2階探索行くからさ」


 エメリオは半泣きで「パト姉一緒に来てよぉ!」と愚図るため、パトリシアは「効率が悪いからダメ! ほら、もう行くから!」と言って、フューズを置いてひとりで2階へ向かってしまった。


 別行動することになったエメリオはパトリシアが床に置いていったフューズを拾ってゆっくり地下室へ続く階段を目指す。


「モーッ! なんでこんなところ歩かなきゃいけないの?」


 愚図りながらエメリオは周りを警戒して前進している中、パトリシアは2階へ続く階段に近づく。


その時、ヘッドホンをしているためギィッ‥‥‥ギィッと、自身の上‥‥‥踊り場を誰かが歩いているような足音が聞こえたパトリシアは「あれ? 唵妙迩! まだ地下室にいる? 2階に行ってないよね?」と唵妙迩に尋ねた。


 そう、エメリオはまだ自身の後ろ……実際の距離なら2mしか離れていない場所にいる。それに自分たち3人以外のプレイヤーがいない現状と、パトリシアの質問から唵妙迩はひとつの答えを導き出す。


「あっ! じゃあ2階だ! EMF持ってけば反応あるかも! ブレーカーボックス直したらすぐ向かうからそれまでに他の痕跡探しといて!」


 パトリシアは「うん! わか……」と途中で何かを察知して口を閉じ、周囲を警戒すると、黒い足跡がエメリオのいる方向に続いているのを見つけた。


急に黙ったパトリシアにエメリオは「パト姉?」と心配そうに声をかけると、パトリシアは「エメリオちゃん爆竹使って!」叫んだ。


 地下室の入り口まで来ていたエメリオは焦りながらも、爆竹に火をつけて床に落とすと、お祭り会場の隅で子供が鳴らすシパパパパパパアン! と連続的な炸裂音がその場に鳴り響く。


 エメリオは周りを見回しながら「鳴らした! 鳴らしたよ? 何? 何か来てたの?」と尋ねながら振り向くと、そこには唵妙迩がおり、驚いたエメリオは思わず「ぎゃあああああ!」と悲鳴を上げると、パトリシアが「あれ? ダメだった?」と爆竹の効果がなかったのかと勘違いする。


エメリオ「唵妙迩さんだ!」 唵妙迩「どうして僕が後ろにいただけでそんな悲鳴出せるの?」


 二人のやり取りを聞いて、パトリシアは唵妙迩に「唵妙迩! 黒い足跡って痕跡に入る?」と尋ねると、唵妙迩は「入るよ! じゃあアレだ! 『悪魔』で確定だ!」と確信を得たようにそう言った。


「盗るモノ盗ってサッサとズラかろう! 多分2階のどこかに硫黄とEMF最大レベルの場所あるぞ!」


 唵妙迩はそう言ってエメリオが落としたフューズを拾って地下室に戻りながら「ちょっと電気つけてくるから二人は2階探索してて! 次襲ってくるまでだいぶ時間あるはずだから!」と言ってブレーカーボックスの場所まで向かい、フューズを交換してブレーカーを上げる。


「よし! 電気系統直した! これでスイッチ入るよ」


 唵妙迩がそういうと、リビングにいたパトリシアは近くにあった電灯のスイッチを入れる。


 すると、照明がついて懐中電灯が不要になるほどの光が室内を照らす。


「さあ、回収出来るモノは全部回収しよう! iPadから高そうな花瓶とか銀製の食器も全部だ!」


 唵妙迩の指示とともに、3人は拾えるモノを拾っては、外に停めてあるバンの後部座席へ積み込む。


 チャット欄では「やってること空き巣じゃねえか!」「おまけにお巡りさんまで共犯してるからね」などのコメントが流れ、エメリオが2階の子供部屋のような場所は特撮系であるそうな人型ロボットのフィギュアを持って外に出ると、点いていた室内の灯りが消えた。


運転席の近くにいたパトリシアが「あれ? ブレーカー落ちた?」と疑問の声を出すと、唵妙迩が「いや、さっきと同じ攻撃だね。建物の外にいれば大丈夫だよ」と言って、レポート画面を開く。


「えっと、黒い足跡と物色中にEMF最大レベルが見つかったから‥‥‥悪魔だと思うんだよな。怪現象起こってすぐだったし、黒い足跡も出ていたっていうなら、特徴的に間違いないんだよね」


 唵妙迩はそう言いながらレポートでこの廃屋にいるモノの正体を入れる欄に『悪魔』と入れて決定を押すと、ローディング画面に入った。


「あー、終わった終わった! 帰りにガソスタのコンビニでハンバーガーかホットドッグでも買おう!」


 唵妙迩はそう言うと、リザルトが表示されて廃屋にいたものの正体が『悪魔』で合っていた。


 まさかの正解にチャット欄は「合ってて草」「流石魔祓い師!」「エメリオちゃん初見プレイでまさかの悪魔w」「パト姉の爆竹使ってはナイス判断だったのでは?」などのコメントが流れる。


再びピットである地下室に集まって唵妙迩は時間を見て動画を締めることを告げた。


「もう時間も遅いし、今日はこれでいいにしようか!」


パトリシア「そうね。私明日の朝早いから助かるわ」


 そういうこともあって唵妙迩は動画の締めに入った。


「ということで、少し早いですが今日はここまで! 次回の配信を楽しみにしてください! それでは!」


パトリシア「お疲れー!」


エメリオ「お疲れ様でした! 次回は活躍できるように勉強してきます!」

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