第4話 華麗なるハッピーエンド

 茜色した思い出へ

 きょうを読むひと

 茜色を読む人へ

 きょうしたおもいで


 終わりのない話を語り続けている。語り手は読み手がいなくても語り続ける。彼や彼女のきょうを思い出を。それは彼らにとってどういう意味を持つのだろう。女神になった彼女からの質問に質問で返した。


「どうして語り継いではいけないのか?」


「自分の話ってつまんないじゃん」


「おもしろいよ」


 私は思わず言ってしまった。語り手としてあるまじき行為。


「私の人生おもしろい?」


「いろんな世界の君を見てきたけど、おもしろいよ。人魚の君も砂漠のカラカラの君も、夕陽を走るバイクの君も、着物のおばちゃんの時も、月の世界の無表情な君も、今の女神も」


「すご、」


「ああ、これでもう私は君を語ることはできなくなった」


「どういうこと?」


「語り手は主人公と話をしてもいいけど、語り手の気持ちを伝えちゃ、いけないんだよ」


 存在がなくなる感覚が、夕陽が沈んでいく感じと似ている。空が地上に返せと引っ張っているように吸い込まれる夕陽。私はこの瞬間は自分のことを語ろうと決めた。きっと古い友人もそうして消えたのだろう。


「待って、やだ消えないで」


「大丈夫、新しい語り手がすぐつくよ」


「何よそれ、そんなの嫌よ。私の思い通りになりなさいよ、女神なんて嘘じゃない、世界を創れやしないじゃない!」


「創ってるんだよ、いつでも。君を語るのが、私の世界の全てだ」


 ああ、これが私が望んでいたハッピーエンドだ。

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