第2話 彼方なるハッピーエンド

 見知らぬ指輪

 鯨よりも深く

 見知らぬ鯨

 指輪よりも深く


 人魚の世界でも彼女は妄想していた。息子の彼もまた人魚で、その時の語り手と私は古い友人だったから、この2人の話をよくした。今後のこの2人の未来を予想した、語り手はいくらでも話を作れる。少し先の未来も見える。次回予告もお手のものだ。女神よりも有能。だが、未来を変えることはできない。やり直しもきかない。やりなおしをした主人公の話を淡々と話すだけだ。


 新しい彼の語り手は私の顔をみるなり嫌そうにした。基本語り手は自分のことに関して無口だ。私たちは生き物ではない。死なない、それでも消えたり他の語り手に変わることがある。たいていは自分の主人公に飽きた時。語り手はいろんな主人公を転々とするのが常識といえる。


 私が長く彼女についているのを嫌がったのだろう。仲良くなれば一緒に語ることもあるが、今回は別々だ。その方がいい、彼女の妄想や空想に加え、彼の指輪の力で話がややこしくてしょうがない。ここはダイジェストモードにしておこう。


 私は観覧車について語る彼女を見ながら別の世界の彼女を思い出す。


 異星人と仲良くなった彼女は、ボンベを背負って鯨と異星人の彼と海の底を楽しむ。彼女は一度この世界で死んだ。星間戦争の世界で一瞬で。絶望の奥深く、やりなおしボタンを押した彼女。明るく生まれても暗くても、斜め上上下右Aわかんないってガチャプレイ、それでも考え込む。そんな彼女が好きだ。

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