彼方なるハッピーエンド

新吉

第1話 妨げるハッピーエンド

 はじめましての距離

 頭上で回るは観覧車

 はじめましては観覧車

 頭上で回るの距離


 ここは、から始まる世界。場所を説明する存在が私だ。彼や彼女、または人でなく、男女の差もない。この世界は、と世の中の説明もするが私は神ではない。


 神というのは人間が作った頭上で輝く存在。太陽だって月や星も、人間が見つけた惑星。それもまたひとつの世界。私はこの世界を否定するでも応援するでもない。ただの語り手だ。勝手に人の心が読めて、物語にする。今私の話が人間の言葉に聞こえるなら、あなたは人間だ。はじめまして、人間。こんな話は普段しない。今回ばかりは主人公は私なのだ。我慢して聞いてほしい。いや、聞いてくれる人なり生き物がいなくても、私はこうすることをやめられない。それだけが私にできること、存在理由だから。


 あなたは観覧車を知っているだろうか。地上から空の中間まで案内してくれる。ゴンドラは風に揺れ、台風が来ればぐるぐる回る。狭いところに2人で入ると仲良くなれる。実際そんなことはないのだが。ここに2人の男女が乗り込んだ。一人は少年、彼は心を読める指輪を持っている。もう一人は30手前の女性、妄想好きな変わり者。2人は別の世界では人魚の親子だったり、また別の世界では敵同士だ。


 私と同じ語り手は生き物の数だけ存在している。私にとっての主人公は彼女だ。そしてどれだけ世界が違っても必ず彼がどこかにいる。


 新しい彼の語り手とは初対面だった。

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