第10話 初っ端は薬草から
私はフェルルとパーティーを組むことになっている。だからかは知らないけど、さっきからフェルルが慎重に
「フェルル、そんなに選ばなくてもいいんじゃない?」
「駄目だよ。だって師匠は今回が初めてのクエストでしょ。師匠なら、ちょっとヤバめのクエストでも大丈夫だろうけど、やっぱり最初は簡単なのにしないと」
「うん、私も危なくないのがいいな」
正直に言おう。私は死にたくない。一回、
だから、こんなにも
「ありがと、フェルル」
「何か言った、師匠?」
「ううん。何でもない」
私は聞こえてないことをいいことに、誤魔化した。だってちょっと、恥ずかしかったんだもん。
それはそうと、私はフェルルが真剣な眼差しで、クエストを選びに選ぶ姿が頼もしかった。
「うーん、どれにしょっかなー。あっ、これいいじゃん!」
フェルルは1枚の依頼書をボードから剥がすと、それを私に見せてきた。
「なになに、薬草の採取?」
「うん。簡単でしょ」
確かに簡単そうだけど、上手くできるかな?不安で仕方ない。
だけどこんなフェルルの真っ直ぐな目を見ていると、嫌とか言えないよ。それにそれにフェルルは私にこう言ってくれた。
「大丈夫だよ師匠!師匠は初めてなんだから、いくら失敗しても誰も怒らないよ」
「そうなの?」
「そうだよ。そんなの、最初っから成功する人なんてほんの一握りで、私もそうだけどミスの連続で上手くなっていくんだよ。それで人を怒るなんて、とんだ馬鹿か自己満足の塊。私だったら、ぶっ飛ばしてるかもね」
フェルルの言葉には力強さがあった。
何だかフェルル自信が体感してきたみたいな感じで、ソースは自分なんだとわからされる。えっ、じゃあフェルルって昔人をぶっ飛ばしたの。
「どうかな?私師匠みたいに励ますの、頑張ってみたけど」
「うん。なんだか、いける気がする」
「そっかそっかー。じゃあ、言っちゃやりますかー!」
「おー!」
私達はいざ初クエストに行くのでした。
「ここが草原だよ」
「うん、草原だね」
フェルルは当たり前のことを言って、私を落ち着かせてくれた。
草原にはそよそよとしたそよ風が吹いている。気持ちいい。
「じゃあ早速、薬草探そっか」
「うん」
何だか今日は私が
さっきフェルルから薬草と、普通の草との違いを教えてもらった。あんまりよくわからなかったけど、多分なんとかなる。そう思い込むことにした。
「えーっと、これは違う。これも、それも、あれも違う」
「そうだよ師匠。少しずつわかるようになればいいんだよ。一つわかったら、次がわかるようになる。そうすれば楽しいでしょ」
「あはは、私はまだその段階じゃないけど。って、フェルルそれ!」
「ん?あっ、薬草だ。ありがと師匠。危うく、潰しちゃうところだったよ」
「えへへ」
何だかわかってきた。
注意力を凝らしていけば、わからないわけじゃない。一つ一つわかるようになれば、何とかなるんだって、思い込むことが出来た。
「でもそれが薬草ってことは、これもそう。あっ、あれも!」
「おぉ、師匠私より早いね。才能あるよ」
「褒めすぎだよ」
「でも本当に飲み込み早いよ」
「フェルルの教え方がいいから、かな」
でも本当にフェルルの教え方は優しくて、それからちゃんとわかる。全然怒らないし、逆に応援してくれる感じが私の肌にあった。
キツくパワハラみたいに相手を押し付けるだけじゃ駄目だってこと、今の日本人もわかって欲しいよね。
そう今となってはどうにもならないことを思いながら、私は手が伸びる先に広がる一面の草原を採取した。
するとこんもりと袋がいっぱいになる。パンパンだ。
「いやぁー、結構採れたね」
「本当。でも、こんなに採っちゃったけど、全部買い取ってくれるかな?」
私はそんな不安が溢れてきた。
だけどフェルルは笑ってそれを吹っ飛ばす。
「あはは、大丈夫だよ。もし買い取ってもらえなかったら、私達で持って帰って使えばいいんだもん」
「それもそうだよね」
私は薬草の使い方わからないけど、フェルルは知ってそうだ。
だから安心して私達は買取に出すことが出来た。しかも採れた量と質の良さのおかげか、かなりの高値になったので私の財布もかなり膨れた。
「嘘でしょ、たった一回でこんなに貰えるの!」
「凄いね、師匠。私でもここまで集めるの大変だったのに」
「それは1人だったからでしょ。今の私達は2人だよ」
私は“2人”の部分を強く強調した。
お互いに助け合って頑張りたい。私は、フェルルにそう言いたかったのだ。
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