第3話 勇者との出会い
1人取り残された私は道なりに森を出ようと思った。
太陽の方向からしてこっちが南だ。
とりあえず少しだけ道っぽくなってるところがあったので、そこを頑張ってくぐり抜けることにした。
「うわぁ、痛っ!」
トゲドケした
「新しいやつだったのに……最悪」
今日を楽しみにしていた新品の制服はすぐに泥だらけになってボロボロになった。だけど大事なところだけはちゃんと守ってくれているので、安心して歩けた。
そうして頑張って森の中をひたすら突き進んでいると、声が聞こえきた。誰かいる。私は喜んで声のした方に向かって走り出した。
「誰かいる。これってとってもラッキーだよ!」
聞こえる声から誰かは当然わからない。
だけど人って明るい方に自然と行っちゃうよね。心細いんだもん。私は泥だらけになろうがもう変わらないので気にせずに走った。すると声はよりはっきり聞こえてくる。
「けへへ、こんなところに女1人ってかよ」
「ちょうどいい
「なあ
「そりゃいい。きしし」
メチャクチャゲスい話に足が止まる。これは駄目だ。絶対に関わっちゃいけないヤバい奴らだとすぐに察して、私は引き返そうとした。
だけど今“女”って言ったよね。ってことは女の子が1人、男達に集団で囲まれている。それがどうにも胸騒ぎがして私は飛び出してしまった。
「ごめんね。私そう言うの興味ないんだ。だから……えっ!?」
女の子の声がした。明るくてハキハキした声だったけど、何を喋ってたのかは耳に入ってこなかった。
それでも私はほぼ無防備で飛び出していて、女の子の目の前に出る。
「な、なんだお前!?」
「女の子相手に集団で襲うなんて
「な、なんだ急に出てきやがって。おい、コイツもまとめてやってやれ!」
「おう!」
男達は
「木の枝が剣になりやがったぞ」
「どうなってるんだコイツ」
男達はビビってしまってたじろいだ。
そんな中私の背中側にいる女の子は私に声を掛ける。
「なにやってるのさ。私なら大丈夫だから」
「そんなわけないでしょ」
「えっ!?」
急な私の強い言葉に声が途切れた。
私はそんな女の子にさらに言葉を続ける。
「大丈夫なんて言われても本当にそれでいいやなんて私は思わない。そんな痩せ我慢やめよ」
「痩せ我慢じゃないんだけど」
「だったら全部1人でやるみたいな感じはやめて。私と貴女、2人でやるの!」
「2人で?でもそれじゃあ君を巻き込んじゃう」
「巻き込まれても平気だよ。私は貴女1人に任せる気はないから、一緒にやろ。ねっ!」
私はそう呼びかけた。
自分でも何を言ってるのかはよくわかっていない。だけだ心の奥底からそう言いたくなったのだ。すると女の子はわかってくれたのか、
「わかった。じゃあ私も勇者としてじゃなくて、1人の冒険者として」
「勇者とかそんなのいいから。いくよ!」
「よーし、やるぞー!」
私と女の子はいっぺんに飛び出した。
私が前、女の子が後ろの男達を相手にする。
「早いっ!?」
「
確かにこっちは2人だけ。だけど女神様に強化された
あまりに楽にあまりに速く。私は剣の平らな部分を使って、男の1人を叩いた。
「ぐはあっ!?」
「お、おいうわぁ!」
続け様に隣にいた男も
剣の平らな部分でお腹を叩き、剣の柄の部分で
「な、なんだコイツら!」
「喋ってると舌噛むよっ!」
スニーカーのつま先で男の
「どうする?」
「ま、まだだ。まだ俺には仲間がぁ!」
「そのお仲間さんは皆んな地面に顔をのめり込んでますけど?」
女の子は結構怖いことを言った。確かにチラッと
冷や汗が出る。どんだけ強いんだよ。これ、本当に私が出る幕なかったんじゃないかな。そう思っても不思議じゃない強さだった。
「貴女なに者なの?」
ふと気になって聞いてしまった。
だけど女の子は首を横に振って「その話は後々」と
「それでどうするの。降参する?」
「す、するわけねぇだろ。お前らまとめてこの俺が!」
「そっか。じゃあごめんね」
私は男が動くよりも早く
思ったよりも簡単に片付けられてのでよかったけれど、さっきこの子が言ってた“勇者”ってなんのことだろうと、ふと考えてしまう私なのでした。
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