馬酔木 ⚠途中で終わる 

桔梗✡⃝✡⃝✡⃝

第1話

カタカタカタ…静かなオフィス内でパソコンのキーを叩く音だけが響く。


「鏡花さーん、ここの書類のチェックよろしくおねがいします!」


彼女もまた、オフィス内で仕事をする社員の一人だった、


「了解です。確認しときますね」


そろそろ、この愛想笑いにも疲れが生じてきた、

この会社に勤めて8年、異性との関係、結婚、子供、何一つ何かがあるわけもなく、ただ普通な暮らしを普通に送ってきた。


カタッ


エンターキーを押すと同時に口からため息が思わず零れ出た


「何やってんだろ、自分」


昔は確かな夢もあった筈だ、幸せな家庭を築いて、子供を授かり、自分のショップを経営する、


いつからこうなってしまったものか


「お先に失礼します」


今から家に帰って掃除、洗濯、夕飯作り、まず何から始めようか…そんな事を考えていると、何やら後ろから足音がカツカツと聞こえる…気がする…いや、来ている。


その足音は私に合わせて早くなったり、遅くなったりして私の歩くペースに合わせて此方へ付いてきているようだ


(「え…怖いんだけど…とりま逃げとこ」)


こんな時に逃げるなら路地裏だ!と案を深堀せず実行した私を一発殴りたい、どう考えても人気のない路地裏になんか入ったら格好の餌食になるというのに。


…きっと休みの日に馬鹿みたいに見まくったアクション映画の影響だろう


あるきにくいヒールを履いた足を精一杯持ち上げながら小走りで路地裏へ入り込む、足の速さには自信があった、


…だけに駆け出した途端に肩を掴まれた時は喉から変な声が出た


「わっ?!」


「しー…騒いだら殺す」


後ろから肩に腕をまわされホールドされる形になり身動きが取れない状態。


男が私にグッと肩寄せする度に髪の毛がさらりと私の肩にかかり、ビクリと肩が硬直した


私の肩を掴んだそいつは背が高い、黒くて長いの髪をした男だった


(「何?誘拐?え?私死ぬの?!!」)


とっさに振り返るとその男と目があった、

途端に男は私から目を気まずそうに逸らした


(「…?どっかで見た事あるような…?やっぱわかんない…」)


長くて流し気味な睫毛、薄い色の眼、…そして、口元のホクロ


分かった、いや、多分だが…


その、私を今誘拐(?)しようとしている男は、恐らく中学校の時の幼なじみ響、だろう


(「?…え?ますます意味がわからん…なんで響

がここに??…でか?自分響に誘拐されんの?」)


わけがわからなくてわたわたしている私を横目に響は私の顔に布を押し当てた


「んっ…?ん”ー!…ん…」


瞬間。甘い香りが漂ったかとおもうと、頭痛と共に…徐々に意識が朦朧とし始めた


(「なん…ね…むい…」)


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