第2話

「─────さん、起きてください。

……………浅人さん!」

「んん、ぅん..........」

「何時になったら起きるんです、か!」

「ングッ⁉︎」

あれから1週間ほど経過した朝、強い衝撃しょうげきと共に俺の意識は呼び起こされた。

目の前にいるのは、珍しい銀髪と可愛らしい美貌を持つ美少女。

2年前、父親の再婚で出来た朝人の1つ下の義妹、 水雫咲 ノアだ。

「ノア。もうちょっと優しく起こしてくれないと、重くて胴体が潰れ─────」

「何か言いました?」

「すみませんなんでもないですすぐ支度します。だからそんな怖い顔で『何か言いました?』なんて言わないで☆」

そう言って俺はベッドから跳ね起き学校の持ち物を確認する。

絶対聞いてた人の反応だったが、生憎今のノアに向かってそんなことを言える勇気は存在しない。

「はぁ.....浅人さんの事ですもんね。深夜までアニメやらラノベやらを見て気付いたらもうこんな時間、ですよね」

「....よくお分かりで」

「オタ活を満喫するのは構いませんが、

そこまでだらしないと女性にモテませんよ?こんなに髪を伸ばして........

元はいいのに顔も見えないじゃないですか」

「ほっとけ。俺はオタクライフを全力で楽しむことが出来ればそれでいいんだ。」

「無理に口出しはしませんよ。では行きましょう。お義父さんとお母さんが下で朝ごはんを作って待ってます。」

「はいよ」

荷物の支度を済ませた俺は、ノアと共に

お義母さんと父親のいる食卓へと足を運ぶ。



「行ってきます」

「は〜い」

俺が通っている私立臨界高校りんかいこうこうはこの県でも屈指の進学校だ。

行きたいと思った理由はただ一つ、家と書店から近いから。これ以上オタ活に最適な環境はない。

「おはよう!」

バチンッ

「ィッてえぇぇぇ何すんだ!」

いつも通り通学していると、不意に後ろから背中を叩かれる。

「今日も地味だねぇー.....

昔の輝きはどうしたのさオタクくん?」

「うるさい禿げろ」

「酷い?!」

そう言っていかにも

「私ショックを受けてます!」という動作を強調してくる茶髪の美少女は、俺の幼馴染である 永矢 梨沙ながや りさだ。

梨沙とは小学生からの付き合いで小、中、高と同じ学校に進学している。

端的に言えば、腐れ縁だ。

「寝癖ついてるよ。また義妹さんに起こしてもらったの?」

「ん?ああ....あいつの起こし方は酷いぞ…」

すると梨沙はそっぽを向いてボソボソと呟く

「いいなぁ。わたしも毎日起こしたいなぁ...........浅人を取られるかもだし....」

「お前、たまにボソボソ話してるけど何て言ってんの?」

「なんでもない!ほら早く行くよ!」

「いやん痛いって」

再び背中を叩いて急かしてくる梨沙に連れられて、俺達は学校へ向かった。

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