第1話 

高校1年生になった春。

俺こと水雫咲 浅人みなさき あさと

アニメやライトノベルのグッズを買うためにチェーン店を回っていた。

何時ものように好きなアニメのグッズや

ライトノベルを漁っていると

「ん………?」

ある美少女が、グッズを山盛りにして歩いているのを目撃した。

ただ、俺が疑問を抱いたのはそこではない。

「綾瀬さん、だよな.........?」

俺が話しかけると、彼女はビクッと肩を

震わせた。

綾瀬 麻奈香あやせ まなか

新しい俺のクラスメイト。

そして今は活動を休止しているが『Mana』として活動していた大人気アイドルでもある。

「み、水雫咲くん…?」

こちらへ向いた彼女は

「なんで分かったの…?」とでも言いたげな表情をしていた。本人に自覚はないのかも

知れないが、彼女の格好はかなり目立つ。

(いや、普通に分かるから)

俺は心の中で苦笑しつつ、気になっていた事を口にする。

「綾瀬さんってラノベとかアニメ、好きなの?」

すると彼女はグイっと興奮したように身を乗り出してきた。

そしてデカい。ナニがとは言わないが。

「うん!水雫咲くんも好きだよね?」

「俺はみんなにオタクだって事を全面的に見せてるしな。でもその量だと、かなりハマってね....?」

今綾瀬さんが手にぶら下げているグッズの量は、控えめに言ってヤバい。ガチ勢を漂わせるその量は、オタクの俺から見ても目を見張るほどだった。

「あっ....バレちゃうよね」

そう言って、あははと頬を掻く綾瀬さん。

「やっぱ美人だよな.....」

「へ?」

「あ」

思ったことが声に出てしまった。

「な、ななななに急に⁉︎」

「いや、悪い」

綾瀬さんは顔を真っ赤にして変な声を上げる。

容姿端麗、頭脳明晰、でも時々ドジっ子の

ような性格を持つ彼女はクラスの、いや学校の人気者だ。まだ学校が始まって数日しか経っていないのにも関わらず、何人もの生徒が告白し玉砕しているという噂をよく耳にする。

その時、綾瀬さんの携帯が震えた。

「.....?嘘、もうこんな時間?!そろそろ友達と遊ぶ約束の時間だから行くね、またね!」

綾瀬さんは焦ったようにそう言い、慌てて去っていく。心なしかまだ頬が赤かったような...........気のせいか。

(綾瀬さん、オタクだったのか)

綾瀬さんの意外な一面を知ることが出来たのはいいが、俺と彼女が関わることは無いだろう。

俺が望むのは平穏なオタ活ライフだ。

そんなことを考えながら、俺はグッズの買い物を再開した。

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