オタク青年は平穏な日々を過ごせない

shizuku

プロローグ

水雫咲みなさきくん聞いてるー?」


何故だろう。


「でね、結衣が失恋するシーンがあったじゃん?その時私、涙腺がもう限界で…何より悲しさを表に出さずに裏で────」


目の前で、つい最近までテレビに出ていた美少女が


「あとここで恥ずかしがる雪乃んもヤバいよね!可愛すぎて昇天しょうてんしそうになった.....もう死んでも悔いはないんじゃないかと思えるほど彼女の可愛さが全面に────」


このまま1時間は止まらなそうな勢いで熱く語る。


「いろはすのここのシーンは絶対笑うよねゴホッ笑いすぎてゴホッ涙出てきちゃっ...ゴホッ」

「オーケーわかったから一回落ち着け」


ここは、同級生かつクラスメイトで


「それで最後の告白も凄かったよね!私このシーンの時息が出来なくなったよ………そしてこの言葉選びが更に────」


現在は活動休止中だが、

間違いなく人気アイドルの部屋。

俺は今、そんな場所で彼女の好きなシーンを

饒舌じょうぜつに語られている。

何故そのようなことになったのか…

それは数ヶ月前まで遡る。

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