第3話
ちなみに『魔法学校』への入学は「魔法が使えるか」という事をチェックする試験を受けるだけで済む。こんな言い方をすると、簡単にも聞こえる。
――ただ、その試験の中に「魔法量」とか「知識」もあるのよね。
しかし、実際のところよほどの事がなければ落ちる事のない試験であるから「簡単」と言えば、簡単樽。
ただ、クラス分けは実力主義になっており、成績上位と下位でクッキリと分けられる。
だからなのか幼少期の時点で『魔法の才能』があるはずのカナリアは、王子たちが上位のクラスにいるにも関わらず、下位のクラスだった。
――でもまぁ、仕方ないわよね。
ただ、あの時の家庭教師のリアクションなどを見ていると、以前のカナリアはとても「真面目」とは言えず「そうなってしまったのも仕方ない」と思えてならない。
たとえ才能があったとしても、知識がなければ上に行く事はないのだから。
――ただ、そうなると疑問なのは主人公よね。
そう、彼女は魔法学校に入学する数ヶ月前に男爵の子供だと判明する。そこから魔法を学び始めるのだ。
――確かに、ものすごく勉強を頑張った……みたいな描写はあったけど。
それに「なぜか昔から魔法が使えた」と言った様な説明書きもあった。いや、もはやモノローグ扱いだが。
――そもそも「魔法が使えるのは階位が上の人間」ってなっているみたいだし。
もちろん「例外」はある。
しかし、主人公は「男爵家の子供」と言う事が分かり、その家の使いが来るまで主人公はそれについて誰にも言っていない様だった。
――そもそも、主人公の母親は彼女が小さい頃に既に亡くなっている設定だったから。
言う必要も、言う相手もいなかった……と言えば、一応説明は出来る。
「うーん」
それ以外にも「魔法の元が出現しても、鍛えなければ魔法として使えないはずなのに、どうやって鍛えたのか」など疑問は残るところではあるが、それはまだ考えなくても良さそうな気もする。
なぜなら、その主人公が現れるのは五年以上先だからである。
「それよりも、目下の懸念は王宮のお茶会よね」
「……そうですね」
目の前にあるのは先日送られてきた招待状。
――とりあえず「参加する」という返事はしたけれど。
このお茶会がどういったモノなのか全く分かっていない。
ただ、自分の年齢と王子の年齢が同じというところを考えると「ひょっとすると、コレは婚約者探しのため知れない」という懸念がどうしても拭えないのだ。
――せめてこういった事に詳しいお友達がいればいいのだけど。
なんて考えてしまうが、今までのカナリアの行動を鑑みてしまうと……すぐに「うん、いないな」と頷きたくなってしまう。
それくらい、今までの彼女の行動は周囲に迷惑ばかりかけている。
「お嬢様の言う『ゲームの内容』を考えると、確かにこのタイミングでのお茶会は婚約者探しの名目が強いでしょうね」
「ええ」
それに、そもそも「貴族」の婚約はもの凄く早い。それこそ、年端もいかないタイミングで親同士が決めてしまう事もあるほどだ。
――でも。
「探し……という事は、王子の意見を尊重するって事なのかしらね」
「そうかも知れませんね」
「もしそうなら……」
――むしろ、今まで通り振る舞えばいいんじゃない?
そう思ったのだが……。
「うーん」
「どうされました?」
「いや、以前のカナリアと同じように振る舞えば、きっと嫌われるだろうと思ったんだけど……」
「だけど?」
「とても自分には出来そうにないなって」
暗い表情で私が言うと、ディーンは「ああ」と苦笑いと共に声を漏らしたのだった――。
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