第3話
「っ! いったぁ!」
そして、私は別の世界に行ったはず……なのだが、突然猛烈な頭痛に見舞われ、思わず顔をしかめた。
「……え、え!?」
その時、ふと自分の手を額に当てたのだが……そこでようやく気がついた。
――なっ、何コレ!
自分の手がここまで小さくなかったという事に。
「!?」
それを確認した私は上半身を起こして辺りをキョロキョロと見て、再度状況を確認する。
――こっ、ここ。さっきまでいた場所じゃない。そもそも外じゃないし。
辺りを見渡した際に垂れてきた髪の色を確認し……すぐにそれが以前の真っ黒な自分の髪とは全く違う事に気がついた。
「あっ、あぁ……!」
そして、あまりにも違う自分の見た目やその光景に思わず絶叫した。
「お嬢様!?」
メイドと思しき人物がカナリアの悲鳴に駆けつけた。
――お嬢様!?
今まで呼ばれた事のない言葉に、私はすぐに扉の近くにいる人に視線を向ける。
「どうされましたか?」
メイドが水差しを持って来た時、ふと自分の今の姿が見えた。
「なっ、なんで。どうして」
――よりにもよって……。
その姿を見た瞬間、私はガックリと項垂れた。
「どうされたのですか」
「あ」
そんな私の様子を見てメイドは一瞬その場で固まっていたが、そこに一人の執事が颯爽と現れた。
「……とにかく、医者を呼びなさい」
「はっ、はい!」
そして、私の様子を確認すると、執事はそうメイドに指示を出した。
「……お嬢様、お目覚めになりましたか」
――え。この声……。
「!」
落ち着いた口調。しかし、声は少し大きめに出され、その声は一人ブツブツと呟いていた私の耳にも届き、思わずハッとして顔を上げる。
「あ、あなたは――」
「久しぶり……って言えば良いのかな」
顔を上げた先にいたのは『自称天使』と言っていた青年の姿だった。
「……」
ただ、なぜか燕尾服を着ていて羽根もない。
「こっ、これは一体どういう事?」
「どういう事? おかしな事を聞くね。言った通り『君の希望に合わせて最適な世界』で『君の希望に合わせた境遇の人物に生まれ直した』んだよ」
「……え」
「君が言ったんだよ? こういう世界のこういう人物になりたいって」
「あ、あー」
彼は「心外」と言わんばかりに不服そうな顔でこちらを見ている。
――そういえば、そんな事を言った様な気がする。
ただ、私からしてみれば「そんなの嘘に決まっている!」と思ってあえて無理難題を言った様なモノだったので、まさかその通りになるなんて思ってもいなかった。
――本当に希望通りなんてね。
「でも。まだ子供よね。この手の大きさと言い、さっきの顔の幼さと言い」
「そうだね。今年六歳だし」
「え、六……歳?」
「うん」
サラリと言われた青年の言葉に、彼女……もといカナリアは固まった。
「えぇ! 嘘、もう六年も経っているの!?」
「うるさいなぁ。亡くなってすぐに転生なんて出来るワケないじゃん。だから、自我が芽生えるタイミングがちょうどここだったんだよ」
彼の答えは要するに「希望の世界の住人になるためには時間がかかる」という事なのだそうだ。
「なっ、なるほど。それより――」
彼の説明を受け、とりあえず納得した。いや、納得はしていなかったが、それ以上に彼女には気になる事があった。
「ん?」
「なんであなたがこの世界にいるのよ。しかも、その服」
「ああ、コレは……」
そう説明をしようとしたところで、先程のメイドが「お医者様をお呼びしました!」と医者を連れて現れた。どうやらかなり急いで来てもらったらしく、二人とも肩を大きく動かして息を切らしている。
――あ、そういえば。お医者さんを呼んできてくれたのよね。そんなに慌てて来もてらって……
そんな二人の様子を見た私の脳裏には「本当に申し訳ない」という気持ちでいっぱいだった――。
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