第2話 女性に手料理を振舞ってもらったことはありますか?
チュンッチュンッ
ピピピピッ ピピピピッ ピピピ カチャ
窓ガラスから朝日が顔に刺す。
もう朝か。昨日はとても良い仕事をしたから、今日も心地良い目覚めだ。
昨日の記憶は覚えているが、やっぱりそれ以前の記憶はないままだ。
机にメモが残っている。
もしかして昨日近づいてきた人物の書置き?
にしても、どうやって部屋に入ってきたのだろうか。
ち、違う。
自分の字だ。
[今日は10時から出勤。]
書いた覚えがない。
そもそもアラームは7:30ではなく10:00に掛けたはずだ。
何かがおかしい。
とりあえず昨日買ったパンを食べて出勤するか。
、、、
、、、パンが無い。
代わりにフルーツとヨーグルト。
買った記憶はないが、、、。
もしかして誰かと同棲しているのだろうか。
あまり考えている時間は無い。
とりあえず食べて出勤だ。
途中コンビニで昼食を買っていこう。
なんだか昨日の制服と様子が違う。
やはりおかしい。
同じホームセンターの物ではあるが、、、
これはペット用品部の制服だ。
名札を見ると、、、、
ペット用品担当マネージャー?
もしかして昨日の頑張りが認められた?
、、、ってそんなわけない。
そもそもこんな制服を持って帰った覚えはない。
着替えるため洗面室に入った。
パチッ
電気をつけて髭を、、、髭?
ん?なんだか歳をとっている気がする。
少し老けた?ような。
寝起きだからか。
もしかして記憶喪失以外に記憶障害まで起こしている、のか?
これは異常だ。
とりあえず知っている場所、人はホームセンターにしかいない。
一人でこんな何もない部屋にこもっているから精神に異常をきたしたか?
遅れないようホームセンターに行った。
マネージャーだがする仕事はどうやら昨日と同じ品出し。
バイトが少ないからヘルプで品出しのようだ。
猫なんかは可愛いと思うし好きだが、いきなり昇給とはどうなっているのか。
おかしすぎる。
正直言って混乱しているが、単純作業で心を落ち着かせよう。
「マネージャー、またこの間のお客さんに指名されてますよ?」
バイトの子だ。この間?覚えはないが、記憶を失くす前の事?のようだ。
「いつもありがとうございます。今日はどのようなご用件で?」
「え、堅苦しいなぁ、、、どうしたの疲れてるの?
もう記憶喪失じゃないんだから!ほら!いつもるーにゃんのご飯!一緒に選んでくれてるでしょ?」
どうやら、猫のご飯を一緒に選んでいる知り合い?らしい。
き、記憶喪失とは、ちょっとドキッとした。
「そ、そうですよね~。今日はどれがいいかなぁ。。。」
「ちょっと高級な缶詰いくつかと、、、それとこれ!ゼリーね!」
「そ、それおいしそう。るーにゃんも喜ぶかも!」
最初から決まっていたのに聞いてくる迷惑客?なのか?
なんだか見た目は清楚系の可愛い女の子?っていう感じだ。
ちょっとデートしてるみたいで楽しいかも。
、、、って、仕事だしそんな目で見ては、、、
「あ、あとおもちゃも買っていこうかな。お勧めは?」
「あ、これとかどうですか?さっき入荷して並べてたんですよ~!」
「じゃあそれを。」
「ありがとうございます。」
「じゃあまた来るね~!」
なんだかウキウキするような、ドキドキするような?
温かい気持ちになる。
ペットを飼っている人というのは、思いやりとか優しさの長けた人が多いのかな。
「、、、ょっと、ちょっとマネージャー、聞いてます?」
あ、いけないイケナイ。
ぼーっとしていた。
「マネージャー、みおちゃんがくるといつも楽しそうですね!
ぼーっとするならもう告白すればどうですか~、好きって。」
「え、いや、お客さんと店員はそういう感情があっちゃいけないんだよ。」
「今時そんなの普通ですって、、、
ぼーっとされる方が困りますよ!」
「そんなもんかなぁ。まぁ、確かにタイプかもって思ったけど。」
「案外あの子もマネの事好きだと思いますよ?
だって、毎回指名するんだもん。いつも探してるし。
そんなの好きじゃないと普通しないですよ?ここに女子店員もいるのに~。」
さっきの方はみおさんというらしい。
本当に好かれているのかなぁ。
今度連絡先でも渡してみようか。
、、、
お昼休憩だ。
ちょっとしたパンとコーヒー牛乳。
なぜかコーヒー牛乳が好きなのは覚えていた。
さて午後も品出し。
今日は早朝にトラックが来てて、ペット用品を大量に降ろしていたからなぁ。
そもそもこの広さのペット用品陳列に二人しかいないって一日あっても終わるかどうか。
急いで効率的に終わらせる必要が出てきたようだ。
毎日本当に忙しいな。身体、持ってくれよ~
、、、、、
ようやく今日の仕事が終わった。
本当に危なかった。
今日は知り合いらしき人に会って話してしまった。
お客さんでも知り合いの可能性があるから、いきなり丁寧語というのも危ないようだ。
とにかく帰り道にスーパーで買い物を。
「あ、また会いましたね!」
さっきのるーにゃんの飼い主「みお」さんだ。
「あ~、仕事の帰りですよ。夜ご飯でも買っていこうかなって。」
「一人暮らしですよね?自炊されるんですか?」
「いや、自炊は苦手で~、、、」
「え?いつもお世話になってるし、何か作りましょうか?」
「いいんですか?嬉しい限りですけど、、、」
「まぁ一人で食べるより二人のほうがおいしいでしょ?」
「じ、じゃあ、お言葉に甘えて。食材は僕が買いますから!なんでも入れてください。」
「じゃあ~」
、、、、
大変なことになってしまった。
まずは記憶がない部分の粗が出ないようにしなければ。
それから、出来る事ならお付き合いはしたい。
、、、お店にも迷惑かけないように、、、
ようやく買い物が済んだ。
「みおさん、荷物は僕が持ちますよ!」
「あ、ようやく名前で呼んでくれた。ちょっぴり嬉しい。
あ、今日はトマトスープ作りますね!
、、、あれ?家こっちなんですか?私と家近いかも~。
毎日ご飯作りに行きましょうか?」
「いや、さすがにそれは、、、
一応男と女ですよ~?そういうのは彼氏さんにしてあげてください。」
「え、私お付き合いしている人はいませんよ~。」
どうやら名前で呼んだことは無かったらしい。
だけど、そもそも苗字を知らない。
バイトの子が言っていたのも気になるなぁ。
本当に好かれているとしたら、自分もしっかり考えないとな。
今のところ客と店員の関係だけど、どう考えてるんだろう。
そりゃ本音でいうと、みおさんってとっても可愛いけど、、、
みおさんの事ってそんなに知らないし、何で好かれてるかもよくわからない。
それよりも、、、
みおさんの手料理、、、楽しみすぎるー!!!
つづく
思い出せない恋のはじまり。 Y kono @yousannow
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