第12話 ずぶ濡れの悲劇②
それにしても、水が散ったからと洗車しに行く墨田さんのご主人もご主人だな。そういや新車を購入したばかりだったか...。子どもが住宅地内でボール遊びをし始めると、車の前に座り込んでた。子どもたちを見守っていたんじゃなくて、車を見守っていたのか。
俺のものは俺のもの、お前のものも俺のもの、と言わんばかりに、お隣の敷地に躊躇なく足を踏み入れる白沢さんに、きれい好きな墨田さん。相性は最悪だ。この近所付き合いがこれからもずっと続くとなると、かなりしんどい状況だなぁ。
「と、とにかく、一旦、お話しされてみてはいかがですか?」
「どういうこと?」
「白沢さんは、水やりした後、墨田さんちのカーポートがどんなふうになるのか、見てもいないと思うんです。」
「そんなこと、出来るわけじゃない!桜木さんだって、白沢さんがどんな人か知ってるでしょ!!」
確かにな。でも、それを桜木さんに言うのも違うだろ。墨田さんも勝手な人だな。これからも桜木さんは、墨田さんのストレスのはけ口として、いろいろ聞かされてはなんの進展もない時間を過ごすのだな。可哀そうに。
「気持ちは分かりますが、逆にこれからもずっとこれが続くのなら、一度だけ、話してみるのもありだと思うんですけど…」
桜木さん、真面目だな。墨田さんはただ、文句を言って、それに同情してもらいたいだけだと思うぞ。実際、桜木さんだけに、この話をしているんじゃないと、俺は知っている。
ご近所さんガチャ はちこ @8-co
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