第11話 ずぶ濡れの悲劇①
不穏な空気は気のせいではなく、もちろん梅雨の湿気のせいでもなかった。
「ちょっと、聞いてよ!」
「あ、墨田さん。何かありましたか?」
ある日、買い物を終えて、帰宅した桜木さんが玄関に入ろうとしたその時、墨田さんに捕まった…いつも外を伺っている墨田さんだからなせる業。桜木さん、かわいそうに。
「見て、これ!」
あれよあれよというまに、墨田さんちの駐車スペースに引っ張りこまれる、桜木さん。
「うちのカーポートにはめ込んだプレート、びしょ濡れなの!!」
「あ、ほんとですね。かなり、濡れてますね…でも、どうして?」
おぉ、確かにきれいな水玉模様。飛び散った土もついている。間違いない。白沢さんが水やりしたんだ。さらに、水の勢いが強すぎて、境界のプレートに水。そして、庭の土も飛び散っている。これは、ひどい。
「な、なんて言ったらいいか・・・」
桜木さんも言葉につまっている。そうさ、何も言えない、何も出来るはずもない。
「車にも水が散って、うちの主人は今、洗車しにいってる。もう、あり得ない!これって仕返しでしょ?信じられない!」
「し、仕返し!?」
墨田さんの剣幕に、桜木さんも引いている。無理もない。桜木さんにとっては、今や、白沢さんも墨田さんも同じぐらい怖いだろう。
「一旦、落ち着きませんか。状況を…」
「落ち着いてられるわけないでしょ!」
あれれ、とんだとばっちり。桜木さんが墨田さんに怒鳴られた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます