第10話 思わぬ援軍、それとも…④
「す、墨田さん、私そろそろ夕飯の支度しなきゃで。」
「あぁ、そうね。桜木さん、昼間働いてるもんね。」
「話の途中で、ごめんなさい。また、今度…」
ようやく解放された桜木さん。墨田さんはまだまだ、話足りなさそう。それにしても、家と家の境界に植栽はトラブルの元なのか。まったく知らなかった。カラスの世界には必要ない知識だな。確かにこの辺り、玄関先に植栽している家はよく見かけるが、境界に植栽はめずらしい。実際、この10軒のうち境界に植栽しているのは墨田さんと白沢さんちの境界、一か所だけ。
そんなやりとりがあって、しばらく経った。季節も変わった頃、墨田さんのカーポートの設置が始まった。宣言通り、カーポートの支柱と支柱の間に、薄いプレートがはめ込まれている。半透明で、向こう側が見えない仕様だ。それにしても、確認するのも怖いが、白沢さんはどんな思いでいるのだろう。墨田さんちの駐車スペースから水やりするにも支障が出そうだ。カラスでも分かるぐらいだから、人間ならなおさらだ。我が物顔で墨田さんちの敷地を利用していた白沢さんにとっては面白くない状況。いや、断りなく敷地に入って水やりするほうが非常識だな、どう考えても。ただ、こんなことで引き下がる白沢さんではなさそうだ。何かが起こりそうな、不穏な空気が漂っていた。梅雨も近づいてきた。湿気のせいもあるかもしれない。いや、むしろ、湿気のせいだと思いたい。
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