第6話 春の嵐⑤
翌週、桜木さんが緊張した面持ちで白沢さんちのインターホンを押すのが見えた。
「こ、こんにちは。桜木です。」
「あら、どうしたの?」
「先日は、本当にすいませんでした。主人とも話したのですが、白沢さんの娘さんにこれ以上甘えるわけにはいかないという結論になりまして。明日からは娘一人で登校させます。無理をいってお願いしたのに、申し訳ありませんでした。今までありがとうございました。」
なるほど、あえて白沢さんの娘さんの実態には触れず、引き下がる。桜木さん、賢い選択だ。白沢さんの場合、娘の非を指摘されれば、逆切れ必至。余計にこじれることは明らかだ。
桜木さんが白沢さんちを後にするところに、突然、墨田さんが現れた。
「ねぇ、もしかして今、白沢さんちに行ってた?」
興味津々の墨田さんだ。彼女は専業主婦で、日中はずっと自宅にいる。時々、リビングのカーテンが不自然に揺れるのは、車の音や人の声がすると外をうかがっているからなんだ。
「あ、墨田さん。実は…」
精神的に参ってる時は、誰かに話を聞いて欲しい。さらに、タイミングよく、自分を気にかけている素振りを見せられれば誰だって、口も軽くなるってもんだ。でも、桜木さん、ちょっと思いとどまってくれ。それこそ、墨田さんがどんな人かもよく分からないだろ。また、悪い予感がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます