第5話 春の嵐④

 俺は今、桜木さんち近くの電線にとまっている。部屋からは桜木さんと、娘の声。


「ねぇ、白沢さんのお姉ちゃんが呼び止めるのを無視して、どんどん学校へ行っちゃうってほんとなの?」

「うん、ほんとだよ。だって、お姉ちゃん、ぜーんぜん学校に行こうとしないもん。私、学校にチコクっていうのしたくないから。」


 おぉ、桜木さんちの娘さん、意外としっかりしてるね。なるほど、白沢さんちの娘さんは寄り道が好きなんだな。これは思ってたのと違う展開だ。さて、桜木さんはどう出るのか。明日の朝、俺も早起きしてみるか。


 翌朝。


 桜木さん、がっつり不審者の様相。まぁ、子を思う親っていうのは、なりふりかまっていられないものなんだろう。小学生二人が歩き始めた。桜木さんも距離を置いてついて行くようだ。そうか、桜木さん、実際はどうなのかを自分の目で確認することにしたんだな。


 ほほぅ、確かに白沢さんちのお姉ちゃん、地面にしゃがみこんで何かを一生懸命見てるな。地面のゴミ?それとも虫か?そんなことはどうでもいいが、桜木さんちの娘さんは、またか、の顔。そして、当の桜木さんは?固まってる。確かに、普通に歩けば数十秒で行き着く交差点まで、まだ、半分。毎朝、こんな状況だったのか。これは、ひどいな。

 

 

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