第162話 アクシデント
伊勢神宮に参ってきました。スーパーカブに乗って大阪を出発した僕は、奈良の明日香村を掠めて、三重の山奥に向かいます。深い山を越えていき、国道368号線を走りました。
ネットでは368号線のことを酷道と紹介されています。狭い狭い山道で、舗装されているだけの林道みたいな国道でした。ジグザグのカーブが延々と繰り返されます。スーパーカブなら楽しいドライブでした。
伊勢神宮の内宮は、凄い人混みでした。元旦ではないし、昼過ぎなので、多少は参拝者が少ないだろうと予想していました。しかし、僕の予想は全く外れてしまいます。参拝するためには、芋洗いのように足を進めるしかなかった。
今年に入り、僕は多くの神社や仏閣を訪れています。京都の広隆寺や伏見稲荷。奈良の石神神社や大神神社。どれも歴史がある遺跡です。しかし、伊勢神宮の規模は全く違いました。辛うじて対抗できるのは伏見稲荷稲荷ぐらいですが、それでも参拝者を捌くオペレーションが違います。歴史的に多くの参拝客を受け入れてきた伊勢神宮は、とても効率的な動線を確立していました。
伊勢神宮を後にした僕は、その後紀伊半島一周に向かいます。向かうのですが、大きな失敗を犯してしまいました。伊勢市でガソリンの補給をするつもりだったのに、そのまま南に向かって走り出してしまったのです。このことに気がついたのは、リザーバータンクに切り替えたときです。すでに山の中。
僕の選択肢は、進むか戻るです。正月二日といえども、中心的な街ではスタントが開いていました。僕はここで戻るべきでした。しかし、判断を誤ったのは、スマホの検索を信じたためです。検索では、20km前方に農協のスタンドがありました。セルフスタンドです。営業中と表示されています。素直に従いました。
――えっ!
閉まっていました。かなり焦りました。ガソリンは殆ど残っていません。ここで、再び選択を迫られました。ここで宿泊して、明日開店することに賭けるか、そのまま進むかです。
悩んだ挙げ句、走りました。「成るようになれ!」です。しかし、間もなくガス欠になりました。馬鹿みたいです。
一先ず、テントを張れそうなところを見つけました。食事も済ませ、今は寝袋の中です。僕は大阪に帰れるのでしょうか……。
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