第144話 焚き火

 キャンプの主役は焚き火です。ユラユラと揺らめく焚き火を見ながら、強いウイスキーを呑むのは、かなり浸れます。何かしらの主人公になった気分になります。


 ところが、焚き火はこちらの意図を汲み取って燃えるものではありません。特に、現場で焚き木になるものを拾った場合は尚更です。


用意した薪と違って、現場に散らばっている木々はかなりの確率で湿っています。昨晩は雨でした。尚更です。


 燃え始めると何が起こるのかというと、煙です。黙々と立ち上ります。風向きが悪いと、狙ったかのように僕に向かって煙が襲いかかります。


 ――なんで?


 煙を避けつつ、巻の配置を変えます。出来る限り煙を避けるためです。でも、上手くいった試しがありません。目が痛いし、息も苦しいです。


 そんなこんなで格闘していると、火が落ち着きます。落ち着くというか、沈黙します。それはそれで淋しい。再び、薪を投入するのですが、また、煙の攻撃を喰らいます。喰らいますが、まー、悪くない。案外、そんなやり取りを求めていたのかもしれません。


 キャンプなんて、面倒くさいイベントです。そうしたイベントを、わざわざ好き好んで喜ぶ輩というのは、


 ――ただのマゾ!


 そんな気がします。胸に手を当てて納得する方、かなりいるんじゃないですか?

 そんなことを思う、今日のキャンプでした。

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