第143話 ソロキャンプ

 奈良の山奥にいます。テントを立てて七輪を用意して、炭に火を入れました。

 秋の虫が一定のリズムで、ツクツク、ツクツクと鳴いています。耳を澄ますと、時々鹿の鳴き声らしきものまで聞こえました。奈良と鹿は切り離せませんね。


 鶏肉や椎茸それに下茹でしと蓮根を、七輪の上にのせて焼いています。いつもなら、銀紙を上に乗せて焼くのですが、今回は忘れました。ゆっくりと焼いています。


 ビールは開始早々に飲み始めました。いつどおり6缶用意したのですが、もう4缶も飲んでしまいました。現在の時刻は18時30分。これでは全く足りません。計算違いです。


 この時期の日没は、17時です。テントの設置は17時すぎから始めました。辺りは急速に暗くなります。暗くなると行動に制限を掛けられます。ですから、特別な料理は出来ません。


 僕の場合は、晩御飯の料理は七輪で焼くだけなので、事前の準備が重要になります。焼き鳥がメインなのですが、予め下準備を済ませておきます。塩コショウと酒、それから大蒜です。今回は、椎茸や蓮根も用意しました。焼けるまでのアテとして、糠漬けも持っていきます。


 酒を飲みながら、この文面を書いているのですが、鹿の鳴き声が五月蝿いです。キュー、キューと鳴き声が山の中を木霊しています。そんなところも奈良らしい。


 焼くものが無くなったら、七輪の上で焚き火を始めます。事前に焚き木になる小枝は拾ってあります。焚き火が始まったら、ウイスキーを飲みます。アテはチーズですが、それ以上のアテがあります。音楽です。


 今はビートルズを中心に聞いていますが、ジャズを含めてリフが強調された単調な音楽をチョイスします。延々と繰り返されるリズムの洪水は、僕の精神を鷲掴みにします。まるで大空に連れて行かれるような感覚です。この世界と繋がったような感覚は、太古の昔から求められた感覚ではないでしょうか。勝手な推測ですが、神と繋がったと勘違いしたのでしょう。違います。ただ、酔っ払っているだけです。


 明日は、奈良国立博物館で開催されている正倉院展を見学します。入場券は時間がしていされています。遅刻しないように気をつけなければいけません。


 多分、もう間もなく酔い潰れます。朝早くに起きるのでしょうが、僕のことですから、きっと二度寝をしてしまいそうです。気をつけなければ。

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