第49話 ベルセルク

 この間、ヤフオクでベルセルクの漫画をセリ落としました。ブックオフ等で購入するよりも安く買えたのですが、少し問題が発生してしまいました。出品されている商品の中から、安く買えそうなものを狙って複数に入札していたのですが、どちらもセリ落としてしまったのです。同じものが、二つ。

 ガックシ。

 タイミングを見て、一セットはヤフオクに出品することにしよう……。


 さて、連載当時も追いかけるようにして読んでいたベルセルクを、今回一気読みしました。かなり面白かったです。話の運び方、画力の素晴らしさ、どれをとっても素晴らしい。ご存じでしょうか? ベルセルク。


 中世ヨーロッパのような世界が舞台の物語なのですが、冒頭から人智を超えた怪物が登場します。普通の人間であればとても敵いそうにもない。人間を頭から食べてしまうような怪物です。その怪物を、主人公のガッツは剣でやっつけます。この剣の表現が良い。痺れます。


 それは剣というにはあまりにも大きすぎた

 大きく

 分厚く

 重く

 そして大雑把すぎた。

 それはまさに鉄塊だった


 身の丈を超える様な剣を振り回し、怪物をやっつける姿は爽快なのですが、ガッツはただの人間です。人間のレベルであれば、はるかに強い主人公ですが、怪物はやっぱり強いわけです。そんな怪物がわさわさと出てきます。ネタバレはしませんが、圧倒的な絶望感の中、主人公は常に抗い続けるのです。相対する敵は、神の様な存在です。人間に蟻が抵抗しているような、圧倒的な力の差を見せつけます。


 また敵は、神のような怪物だけではありません。主人公は過去のトラウマから、コミュ障を患っています。人に触られることも嫌がります。強がっていますが、いつも寂しさを感じています。最も大切にしたい人と、心を通わせることが出来ません。自分の心すらも、巨大な敵となって、主人公を苦しめます。


 ファンタジーの世界にお決まりなチートはありません。魔法やそれに類する力も存在する世界ですが、それらの力には必ず代償が付きまといます。主人公は、あくまでも人間として戦います。その姿に、読者は引き付けられます。圧倒的力や暴力に対して抗う。この精神は、仏教に通じると思います。


 紀元前500年前後、世界中で宗教や哲学が同時多発的に発生しました。ギリシャでは、ソクラテス、プラトン、アリストテレスが活躍しました。中国では、孔子、孟子が活躍しました。インドでは、釈迦が悟りを開きました。時代を合わせるようにして、各地で宗教や哲学が起こったのは偶然ではありません。必然でした。


 狩猟民族だった人類が、農耕という技術を手に入れた時、それまでになかった新しい概念が誕生しました。穀物は貯蓄することが出来ます。ここから富が生まれました。農耕は土地が必要です。国家の枠組みが出来ました。農耕は多くの人が協力する必要があります。人間に役割が生まれ、格差が生まれました。


 土地が広がり多くの人間が集まると、より多くの富が生まれます。その富を奪い合う、戦争が生まれました。紀元前500年頃の思想家は、この激動のさなかで疑問を持ちます。

 何のために人間は生きているのだろう?

 不幸にならないためにはどうしたら良いのだろう?

 圧倒的な暴力に抗いながら逃げながら、宗教や哲学が誕生しました。


 最近の僕は、縄文時代や弥生時代を勉強しています。神道のベースになった縄文時代の宗教は、大自然の中に神を感じていました。狩猟で獲物を捕まえると、それは神からの授かりものとして感謝します。また、大災害が起こると、神が怒っていると受け取り、捧げものを用意します。


 そこには神と人間との格差があり、神の如何によって、人間の幸不幸が決められる運命論的な思想がありました。対して、仏教はその運命をはねのける。抗う思想でした。本来は……。


 明日、仕事が終わってから、愛車スーパーカブに乗って奈良に向かいます。途中、大和川流域でソロキャンプを楽しむ予定です。目的地は明日香村です。二つの博物館で、一日過ごそうと思います。楽しみです。

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