第28話 百聞は一見に如かず
中間考査の内容が記された3枚の紙。
その1枚目の内容は、以下に記されている通りであった。
『一学年一学期中間考査として、行われる実技試験は筆記試験の一週間後に行われる。その内容は多人数における模擬決闘。全70チームはそれぞれα、β、γ、δ、ε、ζ、ηいずれかのブロックに配属される。その特定のブロックにおいて、バトルロワイヤル形式で生存を巡って争ってもらう。制限時間三時間。場所は複数のダンジョンから、ブロックによって決まるものとする。この実技試験の点数配分は、細かに下記の通りである。
・最後の1チームまで残れれば100点、最後の2チームまで残れれば90点、最後の3チームまで残れれば80点、最後の4チームまで残れれば70点……と残っている生存チーム数に応じて点数を得るものとする。このポイントは重複しない。
・他チームを倒すことができれば+10点
・出現する魔物の討伐数一体につき+1点
・配布されたアイテムを使用する+1点
この試験の点数に上限は存在しない。赤点は40点以下とする。
ただこの試験で赤点を取ったチームは、一週間後再試を行うことができる。
再試のルールは実技試験終了後発表されるものとする。
またチームに所属する3人の生徒は『アタッカー』『ブロッカー』『コマンダー』いずれかの役職を割り当てられるものとする。どの役所にどの生徒を配属するのか、このプリント最後のページに提出する用紙が記載されているため、その用紙を試験二週間前までに、『コマンダー』に配属された生徒の担任に提出。
役職についての説明は以下に記す。
アタッカー
・この役職に配属された生徒は実技試験中、魔弾系統の魔法のみ行使を行うことができる
ブロッカー
・この役職に配属された生徒は実技試験中、防御系統の魔法のみ行使を行うことができる
コマンダー
・この役職に配属された生徒は、実技試験中一切の魔法の行使を禁止とする。
・この役職に配属された生徒のみ、事前配布されたアイテムを使用することができる。これはアイテムの利用権限を持っていると言う意味であり、アイテムをチームメンバーに使用することは可能。
事前配布されるアイテムについて
同グループ内における『コマンダーの役職に配属された生徒の筆記試験による点数』の順位によって、配布されるアイテムは異なる。順位が高ければ高いほど、試験において有利となるアイテムが配布される。アイテム内容の一切は翌日HRにてプリントにて通知。実技試験前日に、アイテムは配布される。
バトルロワイヤルにおける勝敗について
実技試験において、生徒の頭上にHPバーが表示される。このHPバーは自身が受けたダメージによって減少していき、0となれば脱落。転移魔法が強制発動し、ダンジョン外での待機となる。ただし脱落したとしても、生存しているチームが得た点数は同様に得られる。
チームにおけるコマンダーのHPバーが0となった時点で、チームは敗北となりメンバー全員強制脱落となる。
試験の会場となるダンジョンのマップを次ページにして示す』
……とこんな感じ。
まさかのダンジョン内での、バトロワである。
中々にハードな内容じゃねぇか。
2ページ目には、僕らのチーム名が『ε-7』であること。
そしてグループはチーム名通り、εブロックに属すること。
加えてεブロックのチームが実技試験を行う、ダンジョンのマップが示されていた。
ただマップと言っても非常に簡素なもので、ダンジョン内の大まかな地形図しか分からない。
もっと詳しく書けよ!
3ページ目は切り取り式になっており、『アタッカー』『ディフェンダー』『コマンダー』に誰を指定するかの提出用紙となっている。
提出期限は実技試験二週間前だっけ?つまり筆記試験一週間前。
筆記試験は丁度一か月後なので、提出までにかなりの余裕はあるな。
気付くとアルマやルイも、俺のピッタリ横について試験内容の記されたプリントを見ている。
ただ……二人とも表情が明るくない。
「なんやこれ。文字が多くてよー分からんなぁ」
「我は神の子である。一般人の書き連ねた文字など、下劣すぎて読めるようなものじゃないことは当然の事実」
「お前ら活字苦手かよ……。しっかり読んどけよ」
二人が必死に紙と睨めっこしてる間に、思考を整理してみる。
先ず考えるべきは、誰がどの役職を担うのか。
役職によって使用できる魔法に制限がある以上、慎重に考えざる負えない。
マジで面倒な試験、考えて来たもんだな……。
とりあえずこの三つの中で、一番のキーマンとなる役職は間違いなく『コマンダー』だ。
この役職は一切の魔法が試験中使えないと言う最大のデメリットを持ちながら、チームの核を担わなければならない。
コマンダーのHPが0になった時点で、試験強制脱落。
更には筆記試験で点数にいって、得られるアイテムが異なると言う。
明日にならないとアイテムの内容を詳しく知ることは出来ないが、間違いなくこのアイテム次第で実技試験の難易度がガラッと変わるはずだ。魔法が使えないなのに、筆記試験の点数は求められる。
くそっ、中々に厄介な役職だ。
とにかく俺がどの役職を担うのか……それが大事だな。
俺は一応、この学園の成績一位の魔術師なのだ。
俺が『アタッカー』になれば、防御魔法容易に貫通するような強力な魔弾魔法を使用できる。俺がこの役職を担えば魔物の討伐や、敵チームを倒すことも容易になる。
次に俺が『ブロッカー』になれば、よほどの攻撃ではない限りコマンダーを完全に守り切ることができる。生き残ると言う点だけ見ればこれが一番安全だし確実。
俺が『コマンダー』になるのなら、筆記試験は多分ブロック内一位になれる。最高のアイテムを利用できるために、試験を容易に進められる可能性が高い。ただこれに関しては未だにアイテムの有用性における情報が乏しいし、何より魔法が使えないのがキツイ。
う~ん悩ましぃ。
「二人はしたい役職とかある?」
とりあえず聞いてみることにした。
二人は苦い表情を浮かべながらも、何とか試験内容を理解したらしい。
「我はコマンダー、一択!何故ならそう、コマンダーとは指揮官と言う意味。ならばアタッカーやブロッカーより偉いと言うこと。まさに神の子である我にふさわしい役職ではないか!」
「おっそろしいほど自己中な理由やな。自分、筆記試験の点数取れるんか?アイテムの有利不利、予想やけどバリ重要やで」
「ふっ、筆記試験の点数など知らんな。がーはっはっは!」
「コイツやっぱ頭のネジ飛んどるわ……。うちはコマンダー以外ならどっちでもええで。コマンダーは無理や。テストで高い点数を取ってる自分自身が想像できへん」
なるほどねぇ。
コマンダー志望に、コマンダー以外志望……と。
順当に争いなく決めるのなら、コマンダーはルイにしてもらうことになるが……
うん、決めるにはまだ早すぎる。
とりあえず二人の魔法の実力が如何なるものなのか。
それを知らなければ分かるものも分からない。
「アルマとルイは、この後授業とかあるのか?」
「いや、今日は休みやで。明日から試験までは休みなくあるけどな」
「そっか。よし、じゃあ二人とも、ちょっと俺について来てもらえるか?」
「ん?よー分らんが、分かった」
「ふっ、神の子である我に指図をするつもりか?ふっ、だがよかろう。貴様は我が魔眼の価値を見抜きし者。お願いならば、聞いてやらんことも無い。がーはっはっは!」
「ほんま自分、Sクラスの魔術師によーそんな態度取れるなぁ。いつかボコボコにされるで……」
二人は何だかんだ言いながらも、俺の後について来てくれた。
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