第27話 大同小異

「なぁ自分ら、そろそろ名前教えてくれんか?これから一緒にチーム組んで中間考査挑むってのに、名前知らんのおかしいやろ?」


Cー15教室に来てから、すでに数分が経過。

眼帯奪って押し倒されたり、何故か仲良くなったりと色々ありすぎて忘れそうになってたが……

そうだ!俺は中間考査の実技試験のためにこの教室に来たんだった!

ドギツイ関西弁少女に、赤メッシュ厨二病少女……

キャラが渋滞しすぎて、脳の理解が追いついていなかった。


「がはっ、がーはっは!我が名を知りたいならば、先に自らの名を名乗るのが礼儀というもの!神の子である我から、名前を最初に聞こうなどと、無礼にも程があるわ!死刑!死刑を求刑する!空降る闇の導きに轟き、天深き光に囚われると良い!」


「その文言、何回言うねん。意味わからんし……しゃぁない、分かったわ。ウチから自己紹介するで。ウチの名はアルマ・エリダ。アルマでええで、よろしゅうな」


「ほう。亜硝酸の亜に、流言の流、魔王の魔と書いて、亜流魔(アルマ)か。見た目に反して、良い名ではないか」


「そんなん言うとらんわ!普通にアルマや!勝手に当て字にすな!暴走族か!はぁ……自分そんなキャラ強いのに、よ〜クラスではあんな静かになれるわ。感心するんやけど」


「え?もしかして、二人同じクラスなのか?」


「せやで。同じEクラスや。一回も話したことないから、名前も知らんけどな」


なるほど、Eクラスねぇ。

確か一番下のクラスだっけ?

俺の順位が一位であることを考えると、Eクラスの奴とチーム組まされるのは当然だよな。

二人ともEクラスだとは思ってなかったけど……

これ俺の負担、マジでえぐいんじゃ……


「ふっ、ふふっ、がーはっは。クラスでの姿など仮の姿。神の子である我が目立てば、世界を乗っ取られたくない何者かが、我を倒しにくるかもしれぬ。細心の注意を払ってるが故の姿なのだ!」


「普通に人見知りって言えや。変に気取りよって……んで、自分の名前は何なんや?教えてみ」


「我の名前を簡単に聞けるとでもお思いか?我は神の子だぞ。格が違いすぎるのだ!恥を知れ」


「はぁ!?何でうちが怒られてんねん!礼儀とか何とか言うから、わざわざウチから自己紹介したんやぞ!」


「ふっ、別に自己紹介をするなどと一言も言ってないわ!」


「はぁ……ホンマ難儀な性格やなぁ。適当なこと言ってないではよ言え。……どつくぞ?」


あ、ちょっとキレた。

アルマがギラりと睨みつけるようにして、拳を握るのが見える。その様子にさすがに、冗談では無いことを感じ取ったらしい。


「ふっ、そ、そこまで本気でキレなくてもいいでは無いか……。全く、教えるから、その拳を収めるといい。……おっほん、我が名はルイ。ルイ・イロン。流血淋漓の流に、異界の異と書いて……」


「そういうのええから。わざわざ漢字当てがうなや!自分、エッグいくらいダサいで」


「そうか。ふふっ、我が神の子であり世界の王となる名前。その価値を分からぬとは、貴様は愚かな感性しか持ち合わせぬようだな。所属するクラスは終わりを司るENDのE。とくと覚えておくといい」


「変にカッコつけんなや!どう言おうと、EクラスはEクラスなんやから、もっと自分の立ち位置、自覚せぇ!はぁはぁ……ウチはツッコミやない言うとるのに、何でこんなツッコまなあかんねん……」


アルマは肩を上下させている。

ごめんな、俺が黙ってるばかりに。

ただ俺は別にツッコミじゃないし、ボケでもない。

変に期待されちゃ困る。



ちなみに当て字云々の話題が出てきたので補足しておくと、この世界の言語は日本語では無く、『ジュエル』って言語。詳しくは知らなくていいが、漢字による当て字ではないことは理解して欲しい。


ただ言葉にはそれに対応する文字があって、まぁ……難しいので詳しくは割愛するが、日本語じゃないけど日本語の漢字と同じ役割をする文字があるって思って欲しい。


「はぁ……ほな自分も自己紹介せぇ。ウチとルイだか流異だが言うやつも自己紹介したんやから」


気付けばアルマが俺の顔を見ていた。


「俺の名前はベータ。ベータ・フォルナーキス。気軽にベータとでも、ベータお兄ちゃんでも、好きなように読んでいいぞ」


「何で自分のこと、お兄ちゃんってよばなあかんねん。ウチはいつ、妹になったんや。つかうちの方年上やろ」


「そうか?」


「ウチは今年で18や」


「ホントだ。俺15歳」


「ほんまか!?うわ三つも年下やったんか……。ほんでベータ、クラスはどこやねん」


「左様左様。我も貴様のクラス、気になっていた。終わりを司る我らEクラス二人と組むと言うことは……つまり貴様、上のクラスだな?」


「う、うん。まぁそうだ。一応その…Sクラスだ」


「Sぅ!?」「S…だと!?」


二人が目を大きくして、俺の顔を覗いてくる。

うわぁ、この驚きと共に期待の籠った目線。

だから言いたくなかったんだよな。


「自分Sクラスやったんか!?マジか、ウチ今までSクラスの魔術師と話してたんか!?信じられへん。雲の上のような存在すぎて、実感が湧かんわ。もしかして、あれか?やっぱ敬語使った方がええか?」


「いや、いいから。普通に接してくれ」


「ほんまか!?いいんか!?ウチEクラスやで?」


「いいからいいから。変に畏れられた方が困る」


「そ、そうか……ほな、ベータよろしくな」


明らかに声震えてんな。

そんなにSクラスの魔術師が偉いとも思ってないんだけどな。

学園に入学できた時点で、魔術師として才能が認められてることに変わりはないし……

Eクラスだからって、そこまで卑下することでもない。


つか普通だったら、俺の方年下なんだから、俺が敬語使うべきだよな……

使ったら、面倒そうだからしないけど


「ふっ、ははっ、はーはっは!貴様がかのsupremenessを司る『S』クラスの魔術師か。がーはっは、貴様には魔眼の価値を見ぬいたその感性。普通ではないと思っていたところ!ふっ、しかし調子に乗るでない!神の子である我と同じチームを組むのだ。そのくらいの実力でなくては困るというものだ!がーはっは!」


うん、こっちはいつも通りだな。

驚きはあっても、変に畏まったりしていない。

むしろより胸を張って、体を大きく見せようとしている。

ちょっと可愛らしい。


「何でルイはSクラス相手に、そんな大口叩けんねん!自分Eクラスやで?天と地ほどの差やで!?」


「いや、アルマもあんな感じでいつも通りでいいからな」


「べ、ベータ、器大きすぎやろ!これか!?これが『S』クラスなんか!?何やろ……喋っとるだけで、人間としての差を感じる!」


俺を過大評価しすぎだろ。

まあシャウラとかだったら、間違いなく許してないだろうけど。


「俺ら中間考査の内容を知りに来たんだろ?内容が書いてある紙どこにあるか分かるか?」


「あーそやった!そやった!けどうちも、知らんよ」


「ふーふふ、はーはっはっはっ!その紙は我が持っている!提示しようではないか!」


「なんで持ってんねん!あんならはよ、見せろや!」


「何故我が見せねばならないのだ!我は神の子ぞ?命令するでない!むしろ今見せていることに、感謝してもらいたいぐらいだな!がーはっは!」


「よーSクラス相手にそんな大口叩けるなぁ。呆れる感情を通り越して、感心するわ」


2人が言い合っているのを横目に、俺は紙に目を通す。

そこには……驚くべき内容が記されていた。

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