第25話 一期一会

Cー15教室…… Cー15教室……あった!

やっと、見つけた……


魔術実験B棟を見つけるのだけで時間かかったってのに、教室見つけるのにこれだけ時間がかかるとは……

何だよこの学園!棟が多すぎるだろ!教室も多すぎ!

地図見つけられなかったら、一生迷ってたわ!


ったく、早めに昼食を切り上げて正解だったぜ。


それでも、ちょっと遅刻なんだけど。

す〜は〜…一回深呼吸。

うん、この教室が魔術実験B棟Cー15教室だな。

これで教室間違えてました!とかが一番恥ずいからな。

再度確認。問題無し!


俺は教室の扉をバっと開けた。

実験棟の教室ということもあり、教室は広く大きな机が並べられていた。

その中央にいる2人の少女が目に止まる。

どうやら俺のチームとなる他2人は女性らしい。


とりあえず遅刻を謝った方がいいかな?

なんて思っているうちに、二人のうち1人の少女が俺のそばまで近づいて来た。


薄緑色の長い髪をポニーテールに纏めている少女。

他生徒に比べ丈の短いスカートに、胸元がガッツリ開いた派手な服装。

腰にはセーターと思わしき服を、結びつけている。

鋭い目つきをしており……何か怖い。


「自分がこのチーム、最後のメンバーか?その手に持っとるプリント、うちに見せてみぃ」


関西弁?言葉訛ってんなぁ。

目の前の少女に促され、手に持っていた教室の場所が書かれているプリントを見せる。

少女はプリントを確認すると、ニヤリと明るい笑みを浮かべた。


「おっ、やっぱうちと同じチームの奴か!チェイ!」


「ちぇ、ちぇい?」


「なんや、自分乗り悪いな。チェイって言われたら、チェイって返すんが常識やろ?知らんのか?」


「いや、しらねぇよ。どこのルールだよ」


「おっと、案外キレキレやな。ツッコミタイプか?」


「しらねぇよ」


「いやいや、うちの目には分かる。自分はツッコミタイプや。そうに違いない!」


「お、おう……だから何だよ」


「うちはツッコミって言われがちなんやけど、案外ボケやねん。うちらでチーム組めば漫才の頂点狙えるで!」


「気が早すぎるだろ」


「ええやんええやん!キレキレやん!やっぱうちら、ええコンビになるで!うちら同じチームなら、中間考査も高得点間違いなしや!」


「そうだといいな。で、チェキって何?」


「チェキじゃなくて、チェイや!チェキやったら、写真やないんかい!はい、ピースってか?二人で写真撮ってどうすんねん!カップルか!って自分、ボケもいけたんかいな?それならはよ、言うてくれや。その情報だけでうちらの方向性が360°変わったで!いや、それ方向性変わっとらんやんけ!やかましいわ!」


ヤバイ、コイツ……一人で突っ走るタイプだ…。

初対面だってのに、アクセル全開すぎるだろ。

一人でノリツッコミしちゃってるし、もう末期。

静かになりたいときとかに、一番邪魔になるタイプ。

これが同じチームかよ……疲れそう。


「チェイってのは魔術師のしきたりみたいなもんや!知らんなら、実践で覚えるしかないで!ほないくで、チェイ!」


「ちぇ……チェイ!」


「乗り良いやん。いい感じやん!もう一人のメンバーが、話が通じそうなやつでよかったわ。あそこにいる奴、意味わからんことぎょうさん言ってきて、話通じへんのや!」


「意味わからんこと……?」


緑髪の少女の目線の先には、もう一人のメンバーであろう少女が居た。


ショートの黒髪に、赤いメッシュ。赤い眼光。

髪の内側に赤色が入っており、いわゆるインナーカラーってやつだ。

制服には何故か穴やギザギザの切れ込みが入っており、ヘソは丸出し。

左目には謎の眼帯。医療用の白くて四角い奴じゃなくて、黒い生地であったり、ストライプがあったり、謎の模様が記されていたりと、ファッションに極振りされている。

そして……何故か、机の上に仁王立ちして、謎の決めポーズをしている。


あぁ……だめだ。

見るからに、コイツもキャラが濃い。


「話が通じない……だと?ふっふっふ、がはっがーはっは!それは我に非があるのではなく、貴様の理解能力の低さが原因だ!だが、それもしょうがないのかもしれんな。我は魔術師にして、神の子。神の使いにして、天界から舞い降りし神となる存在!そして……数百年後、この世界の王となる女!神の言葉を司る我の高貴な言葉じゃ、愚民の民が理解できないのは当然の極み!空降る闇の導きに轟き、天深き光に囚われると良い!がーはっはっはっは!」


「ほら、うちの言ってる通り、意味わからんやろ?世界の王とかコイツ、ほんま何言っとるねん。こんなヤツと同じグループとか、頭狂うわ!」


「がーはっは!狂え狂え!その小さき器の脳じゃ、我の言葉は理解出来ぬであろう!雑音やノイズのように聞こえ、頭痛へと昇華する!結構!結構!神に認められぬ貴様のような矮小な存在では、会話することすらままならない!それが当然!何故なら我は神の子であるのだから!」


「神の子って何やねん。設定か?きっしょいわぁ。どついたろか?」


「我をどつくなど、笑止千万。一般人がこの世界を統べる王となる我に拳を振り上げると言うことは、死に値する!死刑だ!空降る闇の導きに轟き、天深き光に囚われると良い!」


「その言葉気に入っとるん?」


あーあヤベェや。

コイツもクセがありすぎる。

言葉回しは異様だし、確かに何を言ってるのかよく分からない。

そして…見るからにこの二人の相性も良くない。


俺はこのチームでやっていけるのだろうか……。

赤点で退学とか洒落になってねぇ。

順位はどうでも良いけど……『S』クラスから落ちるのも嫌だ!


あれほど甘い蜜を吸わされたのだ

豪華なあの生活をできるだけ、取り逃がすのはゴメンである。

腹を括れ、俺!

俺がこのチームをまとめなくて、どうするんだ!

とりあえず、会話を試みよう。


「……あの…えっとさ、お前なんで眼帯してんの?」


「へぇ眼帯に最初に目がいくとは、貴様中々筋がいいではないか!この眼帯はな!常人では理解できぬ神の魔眼を、封印するためにある!この封印が解ければ最後!この学園は滅び、世界は破滅するであろう!がーはっはっは!」


「へぇ……えいっ」


俺はジャンプして、彼女の眼帯を奪った。

左目の封印が解け、その全貌が顕となる!


って、え⁉︎

その眼は……厨二病のハッタリかと思ったが、異色だった。

そう。

それは確かに……魔眼だったのだ。


虹色に輝き、魔法陣が刻まれている異様な眼。

人の目とは大きくかけ離れた造形をしている。

へぇ、これが魔眼か初めて見た。

けど、うん……明らかに世界を破滅させるような魔眼ではない。


「は!?は、はわわわ……き、貴様ああああああ、何をしているのだ!か、返せ!その眼帯を返せ!」


少女は激しく取り乱した様子で、机から俺に向かって飛び降りてきた。

危ね⁉︎コイツ肩に、飛び乗るつもりだったぞ!

すぐに返すつもりだったが、反射的に避けちまった……

まさかここまで、取り乱すとは……


「ぷはっ、取り乱しとるわ!そのうっすい仮面、外れとるで!」


「う、ううううっさい!貴様返せ、こ、この魔眼を見た者は全員死ぬのだぞ!万物に死神をもたらす、死の魔眼なのだ!貴様それでも、なお返さないと言うのか!死刑だ!空降る闇の導きに轟き、天深き光に囚われると良い!」


「いや、死の魔眼って、さっきと言っとること違うやないか!あはははっ!世界を破滅させるん設定やなかったんか?お?つかうちは魔眼自体嘘やと思ってたけどな。ホンマに魔眼やったんや」


「く、くううううううう!返せ!今すぐ返せ!」


「ちょっ、待て返すからって、うわ!?」


そのまま俺は、彼女に押し倒されてしまった。

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