第14話 音

大学生活も3年を迎えサークルに所属してから6ヶ月くらいの5月の初旬。金曜日の事。刹那と帰り道が途中まで同じの森崎朱音は、刹那を自宅へ誘った。


朱音の家は3階建てアパートの1階にあり、コンクリート壁の独り暮らし用の1LDKにすんでいた。

部屋の中は清潔感があり、白で統一されている中に観葉植物が1つ。テレビとベッドがある部屋が1つとキッチンがあった。


そんな部屋でホラー映画を鑑賞し、遊びの一環として刹那の運勢を占い、時刻は23時くらいになっていた。


朱音 じゃ、アタシ、お風呂に入ってくるから。


刹那 あー、じゃ俺、帰るよ。


朱音 もう遅いし、泊まっていけば良いよ。アタシもまだ、ちょっと怖いし。


刹那 泊まるっても寝る所が無くねー?笑


優香・・・鈍感か?・・・


刹那・・・鈍感?って何だよ?・・・


刹那 うーん。じゃ、とりあえず居ておくよ。


それを聞いて朱音が風呂に入っていき、シャワーの音が聞こえてきた。


その時、隣の部屋からか、ドンドン!と壁を叩くような音が聞こえてきた。

機械工学を習っていた刹那は最初、朱音が風呂に入っている為、配管が響いているのだろうと思っていた。

しかし、ドンドンとなる音は次第に女性の声へと変化していった。

んっ、んっ、と苦しそうな声。


刹那 何だ?


その時、朱音が風呂から上がってきた。

大学では地味めな朱音のパジャマ姿は白い落ち着く感じのパジャマ姿で、普段、メガネをしているのだが、外していた。


朱音 刹那君?どうしたの?


刹那 これ、隣かな?女の人の声、聞こえない?


朱音 そんな訳ないよー。だって、壁はコンクリートだし、分厚いはずだよ。それに隣の人っていなかったはずだよ。


刹那 ・・・悟ル・・・


悟ル ・・・うん。見てくる・・・


悟ルを通して見てみると隣の部屋は真っ暗で家具はおろか、誰もいなかった。


朱音 刹那君?ここってヤバい?てか、刹那君って霊感がある人だったの?


刹那 いや、まぁ。その勘違いかなー笑

空耳だよね。多分、俺、疲れてるんだわ!


朱音 じゃ、ベッド使って良いよ。アタシ、床で寝るから。


刹那 いや、悪いよ。やっぱり帰っても良いかな?


朱音 えー、そんな怖い事を言って帰っちゃうの?


そして、夜12時が過ぎた頃、朱音はベッドに横たわった。

刹那は、とりあえず床で横になった。


すると、また壁から音が鳴り始めた。


そこへ、猫の声も混じってきた。猫は何かと争っているかのように激しく鳴きながら、ガサガサっと走り回っている音を出していた。


その音は、さすがの朱音にも聞こえていた。


悟ル 兄ちゃん!これ、強いよ~。僕、耳が痛い!


優香 キャーこの感じ!S子様では?


祖母 多少なら抑えられる!刹那、指輪は?


そして、朱音が起き上がり、窓のカーテンを開けた!


朱音 イヤー!あ、あ、


朱音が腰を抜かして座り込むと刹那に助けを求めた。


刹那が窓を見ると窓の外には全身を赤く光らせ、正座をしながら手を合わせ何語か分からない言葉を発している着物姿の老婆がいた。


刹那が指輪をはめた!

すると祖母の力が増していくのと同時に悟ルが苦しみだした。


悟ル ウワー!音が強くなっていくよー!


そして、老婆が徐々に姿を消していき、猫の鳴き声も消えていった。


刹那は、すぐに朱音の頭と背中をさすり、抱きしめた。


刹那 森崎!大丈夫か?


朱音は涙を流しながらも混乱をしていて、震えながら刹那に抱きついた。


朱音 刹那くん?アタシ、夢を?


刹那 いや、うん。夢だと思った方が楽かも。でも、もう大丈夫。


刹那 ・・・ばぁちゃん?あれは?・・・


祖母 ・・・呪霊のようじゃったけど、生き霊にも感じた。アタシにも見当が付かないよ。・・・


そして、朱音は刹那の唇をか弱く奪うと、そのまま、気絶していった。


この時、刹那にとっては一応、ファーストキスになった。















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