ナターシャ
松井みのり
ナターシャ
日本の立場。それから、そこに住むわたしの立場。戦争をしていない国の立場。戦争を体験したことのないわたしの立場。
わたしは戦争をしたいという人間の気持ちがわからない。あるいは、戦争をしなきゃいけない状況の人間の気持ちがわからない。
おそらく道徳観以外の理由で戦争を行うことのほうが多いのだと思う。しかし、何かの手段の一つではあるのだと理解しているが、その手段を選ぶ気持ちがわからない。
わたしのインスタグラムのフォロワーにナターシャというロシアに住む女性がいる。それから、アリョーナという日本に住むロシア人女性もいる。
日本のメディアやSNSを見ていると、ロシア人は全般的に戦争に反対している人が多いように思う。
アリョーナはこの戦争に反対をしている。インスタグラムのストーリーズにもロシア語や日本語で戦争反対だということを連日記載している。
しかし、ナターシャはそうではないように見える。ナターシャはロシアのウラル地方に住んでいる。わたしはロシア語がわからない。これが辛い。翻訳サイトを利用してダイレクトメッセージを送ってみようかと考えたが、こういったセンシティブな話題は、小学校レベルでもいいから母国語で話し合うべきじゃないかと考えている。プーチンの恐慌政治によって、意見は監視されているという話もあるが、この戦争に賛同しているロシア人もいるという。わたしはナターシャの話を聞いてみたい。
戦争の対極にあるものが、対話による和解だと考えている。
世界中に住む全員と対話を行うことは、無理だとわかっているが、ナターシャの声さえ聞くことができない。
自分がいかに無力かわかる。
ナターシャの話を聞いたところで、この戦争が止められるはずがないことも知っている。
この悩みは傲慢である。しかし、どこまでも自分が無力と感じるばかりであり、悔しいのだ。
ナターシャ 松井みのり @mnr_matsui
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