本編

番外0 王立異世界研究所

 皆さま初めまして。わたくしは『生体ゴーレム』の『マイティー・スピリット 6号』です。型番は『MS-6号』。


 ――ああ、そうだ。わたくし先日、二年ぶりの『召喚勇者』さんに、お会いする事ができたのですが、その時に『忠太郎』という素晴らしい名前を頂いたのでしたっけ。失念しておりました。


 『召喚勇者』さんは、中々ユニークな方でした。ご一緒に行動されていた『獣人娘』さんも、元気で可愛らしい方でしたね。


 まだこの世界に飛ばされて来たばかりの様で、この国の通貨の持ち合わせが無く、わたくし、失礼ながら用立てさせていただきました。いえ、彼が持っていた『異世界の通貨』を買い取らせてもらったのですがね。


 ――そういえば、『先代勇者』さんの通貨も買い取りましたっけ……たしかドル紙幣が数枚と、コインが数枚。


 ――そうそう、この写真です……アナタが大切にしていたこの写真は、今もちゃんと、とってありますよ『先代勇者』さん……アナタが亡くなったのは二年前の事なのに、ひどく懐かしく思えますねぇ……。


 アナタが異世界から持ち込んだものは、わずかな通貨と、この写真だけでしたね。


 今度の『召喚勇者』さんも、お財布以外なにも持っていない様でしたよ? わたくし思い出して、つい笑ってしまいました。


 ――もっともゴーレムですから、表情は変わらないんでしょうけどね。


 お金を持っていないと分かった時の『獣人娘』さんの反応といったら……うふふ……立ち上がって『召喚勇者』さんの胸ぐらをつかむんですが、小柄なので、ぶら下がっているようでした。


 ――こんどの『召喚勇者』さんは、この世界を、一体どのように変えてくださるのでしょうね? 今からとても楽しみです。


 ――アナタのように、この世界を愛してくれるといいのですけれど……。


 この世界に飛ばされて来て、四十年間……あなたは本当にこの世界のために尽くしてくれた。


 この世界に来た時に失われてしまった、アナタが本来持っていた筈の異世界の能力が有れば、きっと、もっと簡単だったのかもしれませんが……今では本当に平和になりましたよ?


 わたくし、歴代の『召喚勇者』を見てきましたが、アナタが一番、勇者らしい勇者だと今でも思っています。アナタの事を、とても気に入っていたんでしょうね?


(――想像してよ……みんなが、ただ平和に生きているところを……)


 ――妻の『ヨーコ』さんの肩を抱き、息子の『ショーン』さんと三人で写っている若いアナタの笑顔は、この世界では、あまり見た事の無いものです。


 ――やはり、少し寂しかったのですか?


 でも、その笑顔を……亡くなる前、私にも見せてくれましたね……うれしかったです。


 ゴーレムだから分かりづらいかも知れませんが、本当に嬉しかったのですよ?




 今頃アナタは……どの世界にいるのでしょう?




 もしかして、また、『召喚勇者』として、活躍していますか……?

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