#2
離任式の時以外全く外出しない春休みを過ごしたからか、新学期2日目の外も昨日と同じように体が重い。
少しだけ車で送られ着いたバス停には、次のバスまで15分もあるのに、楽しそうに話をする制服姿の男女が何人か見える。
僕が新入生の時は絶望しながらバスを待ったのに、普通はあんな感じなのだろうかと不思議に思いながら、バス停に隣接した小屋の裏へ歩き出す。
田舎である南葛城から全く出ることなく17年目を迎えそうな自分、新色伊折(にいいろ いおり)は、隣の下原市にある下原高校理数科に通う2年生である。
社会科好きの文系だが、自宅から通える高校が普通科と理数科しかない下原高校、もしくは地元の農業高校しかなかったこと、中3の担任に理数科は特進コースの様なもので、社会科も学べると説得されたことから、仕方なく理数科に入った。
結果理数系の進行速度に追いつけず、それに対応するため文系科目などやっていられないため後悔している。
小屋の裏は1年生の頃からバスを待つ際の僕の居場所である。普通バスを待っている奴らに絡まれることは無いし、少し長く突き出た屋根が雨をしっかり防いでくれる。そこで授業の小テストの勉強や数学の予習なんかを必死にやりながらesportsの情報を漁るのが去年までの日課だった。
「.........」
「......は?」
1人だと思ってやってきた先では、長髪の女の子がスマホをいじっていた。
いつもならさっさと逃げていたところだが、残念ながらそうもいかない。彼女は僕に気付くや否や、目の前までやって来て、一言。
「...先輩の靴、汚いね」
「それが挨拶も無しにいうことか、黒瀬」
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